おもてなし、と言うと、必ず登場するのが、茶道です。マナー講習で、講師の先生に来ていただくと、”みなさん、茶道をなさるといいわ”と毎回おっしゃいます。
私もかつて数年間お稽古に通いました。面白い、興味深いと思えた点はもちろんいくつかあります。でも、あまりにルールが窮屈で、稽古場の雰囲気も窮屈で、仕事で遅れたりると、雰囲気が気まずかったり、暗黙知も多くて、途中で断念してしまいました。でも、その後、様々な形でお茶を楽しんでいる人たちを見て(自宅にお茶室があったりして)、茶道って楽しく、奥深いいものなんだ、と感じつつ今に至っています。
さて、茶道がもっとも盛んだった時代はいつか?と調べてみると、安土桃山!ではなくて、明治時代後期から昭和中期とされています。女性のたしなみごととして大流行。花嫁道具の一つとして1000万人もの人が嗜んでいた時代があったそうです。
百貨店にしても、ホテル業にしても、その初期は、手さぐりで様式を作ってきた様が、様々な本に記されています。すぐに”外資ノウハウ導入”となる現代に比べると、創意工夫を重ね、日本の接客のスタイルを作り上げてきた歴史があります。
たとえば、現在の三越の基礎を作ったのは、武士の出の人でした。ホテルの多くも明治時代の上流階級が、海外から賓客を迎えても恥ずかしくないものを、と作り上げたものがベースになっています。このプロセスにおいて、接客の基本になったのが、たしなみとして広く学ばれていた茶道でした。そして、設立者の文化的な知見がふんだんに投入されました。明治維新から続く、この時代は、日本を挙げて文化も経済も一大ベンチャーの勢いがあります。
百貨店と茶道、なるほど~と一人うなづいてしまいました。生まれるときには、多くの創意工夫があったものが、”高級””上流”の衣をまとった瞬間、決まり事の塊になってしまい、本来の価値を失ったものに見えるからです。以て為していたものが、徐々にマナーやプロトコールに取って変わられた瞬間を感じます。
茶道を習っていて、今一つしっくり来なかったのは、理由の説明が無かったからです。座り方、歩き方、お道具の扱い方、など、一通りはおそわります。でも、何故そうするのか?と理由を尋ねると、一瞬にして空気が凍ってしまったので、それ以上質問するのは止めました。かなり長く通って、私が興味を持ったのは、季節によって窯の場所を変えることと、相手にお茶碗の良い図柄をお見せすることが良い、ということの2つです。
その後、茶道を楽しんでいる方々との出会いがあり、奥深く楽しいお話を聞かせていただく機会が増えました。こうやって、もっと考えながら楽しむことができれば、茶道はもっと多くの人が日常生活に取り入れることができるだろうに・・と感じます。