あけましておめでとうございます。好天に恵まれ、晴ればれとした新年になりました。
2016年の今年、ウェルネス・アリーナを設立して10年目となります。2006年9月に会社を設立し、翌年の7月からスパの運営を開始しました。会社の設立も運営の開始も、思いがけないことの結果の産物でした。それでも、何とか10年やってこれたのは、この仕事に夢を持ち、情熱をもって取り組んでくれた社員たちと、どんな時でも応援してくださった株主あってのことです。
静かなお正月、この10年で何が一番印象に残っているか、考えてみました。
2011年3月11日の東日本大震災は、私の価値観を大きく変えました。人のつながりや日本人であることを、この時ほど強く感じたことはありませんでした。
地震の直後、軽井沢の店舗には、多くのお客様から、スタッフの安否を心配するお電話をいただきました。その後の業務再開時には、スタッフが無事かどうか心配していた、スパの施設も前と変わりないか、と続々とお客様が来てくださいました。ずっと緊張していたけれど、ここでトリートメントを受けて、ようやくほっとした、と涙される方もおられました。もともと、リピーターが多い店舗ではありましたが、関東圏のみならず、遠い地域からもご連絡をいただいたことには、驚きもし、感激もしました。
その後、停電続きだった都内から移って来られる方、福島から来られる方などが目立つようになりました。津波を経験され、大切な方を亡くしたショック、そのことを口にできない日々のことなど、ポツリポツリと口にされる方のお話を聞き、スタッフたちは、ただ手を握ってともに涙することしかできなかった、といいます。メールや電話は通じるものの、移動もできない、東京も薄暗く死んだような街になっている日々、そんな中で”セラピー”の本質を見る思いがしました。この時期の日報を読むと、いまだに切なくなります。
しばらくたって、東京が平静を取り戻したとき、新しい地下鉄の開業、東京駅の新駅舎のお目見えなどが発表されました。あの大混乱と余震の中、着々とプロジェクトが進んでいたことを知ったとき、日本人であることに強い誇りを感じました。とはいえ、まだまだ日本の先行きに懸念を持たれる中、プロジェクトの凍結や外資系の撤退も多く耳にしました。そんな中お話をいただいたのが、大阪のインターコンチネンタルホテルの開業プロジェクトでした。
私が手掛けるスパの中で、初めて”日本”を意識したコンテンツを入れたプロジェクトです。開業して数年、それまでは予想のつかなかったほど、インバウンドゲストが来訪されるようになりました。このことを予見したのか?と質問を受けることがあるのですが、むしろ逆です。企画を立てたとき、まだまだ震災の余波があり、どんな分析も戦略も絵に描いた餅、という状況でした。その意味で、私は表現したいものを形にするという幸運に恵まれただけです。
10年続けて、ようやく基礎ができたかな、という気持ちの新年を迎えることができました。数々の出会いに感謝しつつ、今年も一歩一歩前に進んでいきたいと思います。