”英国王のスピーチ”を観に行きました。上映していた日比谷シャンテは全館挙げて上映中。それでも満席続きで、アカデミー賞の影響の強さを実感します。そもそも、この映画館で”満席”の場に居たのが初めてだったので、ちょっとびっくりしました。平日に行くことが多い映画館だったことと、ややオタク色の強い作品だったこともあるけど・・。こういうタイプの映画館の閉館が続いているので、上映作品のヒットはとても喜ばしいこと、ちょっと嬉しい気分です。
さて、作品についてですが、映画らしい映画。じわ~っと感動が広がってくるタイプの作品です。ストーリーもさることながら、俳優さん、演出のどれをとっても上質な感じで、イギリス国王の悩み克服、という、ややもすると、雲の上のやんごとなき人のことでしょう?となりがちな人を主役にしたストーリーにとっても強い共感を抱かせるものでした。
ドイツとの開戦にあたり、国民に語りかけるスピーチの場面では、こちらも引き込まれて、思わずうるうる・・。言葉の持つ力をしみじみと感じさせてくれました。
と同時に、メインストーリー意外に2つのことを感じました。
一つは、王室の重さ・責任が精神面に与える影響です。家族ですら温かみを持って感じられない、身近な人から受けたいじめ、愛の無い叱責がいかに人を傷つけてしまうか、ということ。名君と言われる人も、幼少期は困難を乗り越えてきた、という話は日本にも多いので、人の上に立つ生まれって大変なんだなあ、と感じます。
あと一つは、シンプソン夫人のこと。女性誌でよく登場する名前。”王位を捨てた恋”として語りつがれるラブロマンスです。以前、カルティエの展覧会を見に行った際、1940~50年代に”ウィンザー公爵夫人のオーダー”として数多くの宝飾品が飾られていました。現代の宝飾品の中では群を抜く豪華さです。思わず”ひえ~っ”と絶句。カルティエの宝石っていうのは、こういう人のためにあるんだなあ・・とショックを受けて、すっかり宝飾品に対する興味を失ってしまったほどです。(せっせと貯金をして小さなブローチを買うのも何だか空しい・・)こんなに贈られて、何て幸せな人なんだろう、と思っていたのですが、映画の中では”夫人に贈る真珠のネックレスのために使用人80人を解雇”というくだりが出てきます。えっ、そういうこと?思えばイギリスだって、第二次世界大戦でかなりのダメージを受けたはず。そんな戦中・戦後に、次から次に宝石を注文するって確かにちょっと・・。
映画の中で、周囲が”王となるにふさわしい”と何度も力づけるシーンが出てくるのですが、確かに母国が緊急事態に直面しているときに、愛人にうつつを抜かして、贅沢三昧な君主ではダメだったろうなあ。愛に生きたウィンザー公、とまるでおとぎばなしの王子様のように思っていた人ですが、見方を変えればダメ男なのね、とふむふむとうなづきつつ観てしまいました。
と、豪華宝石の謎も解け、個人的には二度おいしい映画。とってもお奨めです!