変化のない国の印象が強い日本ですが、実は結構変わっています。特に働くことに対する価値観。
先日、一番最初の職場、ボストン・コンサルティング・グループのアルムナイパーティがあり出席してきたのですが、本当に多種多様。官僚出身→BCG→さらに転職、もしくはベンチャーというキャリアの人もゴロゴロいました。私が在籍していたころは、日本の大企業から社費でMBA留学していたり、霞が関から留学しているような方は、ほとんど動かず、採用したい人事担当者は熱心にアプローチをしていました。私の同期男性は、すべて東大出身ですが、全員家族に大反対され、その反対を押し切って入社するのが大変だったようでした。その状況は一変し、今や東大出身者でも霞が関にはいかず、最初からコンサルティング会社を志望する人が多いという状況になっています。
女性の働き方も大きく変わりました。私は1987年卒業で、雇用機会均等法二期ですが、大学時代には女子大生ブームやお嬢様ブームなるものがあり、卒業しても働かない、もしくは商社や銀行に補助職で入社し、社内結婚で寿退社というのがゴールデンコースでした。CAから商社・銀行の方と結婚というパターンも多かった気がします。その後は、”とらばーゆ”がリクルートから出され、キャリアリセットのために留学する、というパターンも流行りました。一つの会社にずっと勤務するのがなんだか格好悪い、局化すると邪見にされる、というムードもありました。
こういった変化があると、流行に乗る人が多く出現するわけですが、変化が持続するかどうかには、それなりの理由があります。たとえば、コンサルティングですが、初期段階でこの業種を立ち上げた方たちには、並々ならぬ苦労がありました。そもそも当時はクライアントが圧倒的に少ないので、仕事が無いのです。米国並みのレベルや価格のプロジェクトを取ろうと思うと、経験のない若手には仕事が回ってこない、でも、レベルを落としてリサーチプロジェクトを取ると、コンサルティングの質が落ちる。当時の幹部は本当に大変だったと思います。そのうち、大きなプロジェクトが成功をおさめ、徐々に日本で定着するようになっていきます。道を切り開く人がいてこその業界の成長なのです。その分、当時の幹部の方々は社会的にも金銭的にも成功をおさめ、悠々自適の生活を送る方が多いのですが、その状況を見て入ってくる方の今後については、何とも言えません。ただ乗りでうまくいくほど甘くないと思います。
女性の働き方については、迷走&道半ばかな、という印象を受けます。色んな方に相談されるのですが、一つ言えるのは、あまりに転職が多いと後半で苦労しますよ、という点でしょうか。職種を問わず、転職が多い方の場合、”認めてもらえなかった””職場がブラック””自分に合っていない”を主な理由として挙げられます。特に、就職氷河期の方の場合、自分たちの世代は不遇、という価値観が根強く、何かを信じて続ける、という姿勢に欠ける印象を受けます。
何度も転職をして、40代、50代を迎えて、さらに転職となると、後押しできるようなお話をすることが難しくなるな、と感じます。不遇、不当という話の内容も、気にするかしないかは、人による、という内容のこともあり、今いる場所で続ける方がいいんじゃない?そんなに青い鳥はいないよ、と話すことが増えました。
日本では、リクルートが転職をビジネスにしてから、転職を後押しするような風潮が出来ていますが、実際には長く勤務して年齢を重ねた方の方が、60代以降は明らかにハッピーです。私の知り合いにも多くおられるのですが、気づけば引退、社会保障しっかりで、今や悠々自適で趣味や旅行を楽しむ日々。在職中は、多分色々な悩みがあり、どんどん環境を変えてキラキラ発信をする友人を羨ましく思ったこともあったでしょうが、振り回されずにずっと我が道を行き、年を重ねてこられたようです。そのキラキラ発信していた側も存じ上げていますが、いつも時給を気にする方でした。自分はもっと高く売れるはず、評価されるはず、というのが口癖で、様々に転じて、今もまだ自分探しを続けておられます。
環境の変化でもう一つ。ブラック企業やパワハラといった様子が報道され、働く現場でも細かな管理が増えました。部下に食事をご馳走しようと誘ったら、”それって残業つきますか?”と質問された、という話は普通に聞きます。研修中に部屋の片づけを頼んだら、随分時間がかかったようで、1分単位で残業を付けてきた、と頭を抱える上司も多くいます。コスパ、タイパが大きな価値感を占める日本人学生に比べ、海外から来た学生でその後日本で就職した方の方が、成長意欲が高く、育てがいがある、という話も良く聞きます。その結果、伝統的日本企業でも、リーダー格には日本語が出来る海外出身者が増えてきています。ホテル業界も同様の傾向があります。
キャリアアップしたいと言いながら、結果を出す前に条件面にこだわり過ぎたり、学ぶ機会に消極的だったりすると、結局数年後には思ったのと違う未来が待っている気がします。コンサルティング会社の成功には、先人の努力があり、転職ブームにはビジネスの仕掛けがあります。(リクルートが成功したのは確かですが、踊らされた側については何とも言えません)因果関係がはっきりしている中、どういう働き方をするのかは、どういう未来を描くのかとほぼリンクしているのは確かです。