ミッションというと、やや大袈裟なのですが、今回このスパではじっくり取り組んでみたいことがあります。それは、アリーナに集まってくださった方たちのショーケースとなることです。
この考えは、私が北海道のウィンザーホテル洞爺の再生プロジェクトに関わっていた頃からずっと抱いていました。そして北海道でもいくつかのことを試みました。しかしながら、いかんせんまだ経験が無さすぎました。ウェルネスを考える上で、網羅する範囲の広さと深さはおぼろげに理解できたものの、道は遠いなあと感じたのが、この頃です。その後、宮崎のフェニックスシーガイアの再生に関わるようになり、その考えは少し変わっていきました。北海道の一リゾートホテルであったウィンザーの立ち位置と、県の経済そのものにまで影響を与えるシーガイアでは、周囲からの期待も役割も大きく異なることに気がついたからです。シーガイアの再生は、”宮崎のショーケースとなる”を基本に据えて、コンセプトを開発していきました。リニューアルのプロジェクトを通じて、多くのクリエーターたちと仕事ができたことは幸運でした。
都会のマネをし続けたホテルから、宮崎の文化や産物を取り入れたリゾートに変身したシーガイア、このことは県外、特に東京からの集客をもたらし、その後初の黒字化に大きく貢献しました。やはり人は”その土地ならでは”のものに魅かれるのです。
スパにおいては、この傾向はもっと顕著です。フランスのワイナリーに併設されたボルドーのスパ、タイに自生するハーブを取り入れたスパ、海のそばにはタラソテラピー(海洋療法)があります。
軽井沢を皮切りにスパの運営を始めてからも、それぞれの土地の要素を最大限に取り入れています。軽井沢は森を、広島は海と空をコンセプトにしています。
そして今回の大阪・・。実は都市部は結構ハードルが高いのです。都市化のプロセスの中、自然や歴史の印象は弱まっていますし、多忙なゲストも多い中、こういったコンセプトを重視する方ばかりでもありません。その一方で、より多くの人との接点があるもの、また事実です。だから都市部のホテルスパは、海外ブランドのスパを導入することが多いのだと思います。
大阪のコンセプトは、グランフロント大阪自体の考え方を基本にしました。日本の優れたものを世界に発信する、インキュベーションを通じて新たな価値を創造する、との志を掲げての開発です。色々考えた結果、”日本のもてなしを世界に発信”をミッションに掲げました。
これは、トリートメント内容だけでなく、しつらえ、季節感なども含め、ゲストの五感に響くものを、日本のモノ作りの中から選び、作り、紹介することを考えています。オープニングプロジェクトとして、いくつかのアウトプットを紹介していますが、今後ご縁を広げて、47都道府県すべての”よい物”を取り入れていければと思っています。洞爺の頃からもう10年以上が経ち、私の引き出しにも、少し蓄積ができてきました。
宮崎にとって、シーガイアが来訪者との接点でショーケースであったのと同じように、都市部の一等地にあるホテルやスパは、最高のショーケースになり得ます。訪れる人にはいつも新しい発見があり、作り手にとっては、出会いの舞台である場所。そんなスパにしていけたらと願っています。