スパのトリートメントルームには、それぞれ名前がついています。軽井沢のスパザフォレストでは、地元の植物の名前、広島のスパザブルーでは、瀬戸内の島の名前から選びました。ホテルのスパプロジェクトのメンバーの方たちにお願いし、候補を挙げていただいた中、議論を重ねて決まりました。植物や島の名前といっても、五感やその格など様々な要素のバランスを取っていきますので、かなり時間がかかるプロセスです。
この名前をつけるプロセス、なぜか毎回プロジェクトが一番忙しいときにやってきます。(仕切りが悪いと言えばそれまでなのですが・・)設計をする際、施設全体のコンセプトや配管、電源の位置、各種許認可、部材選定、備品選定と進み、日々多くのことを決めていく必要があります。そして実際の施工が始まるタイミングには、面接やトレーニングの仕込みに入る必要があり、これもまたてんてこまい。大抵の場合、人が多く絡むことは予定通りには進みません。調整調整、また調整の日々。
という状況の中、ドアに紙が貼られます。”1・2・3・・”名前が決まっていないので、施工の段取りを組む際に、部屋を番号で呼ぶのです。そしていつも頭に浮かぶのは、”番号でもいいか”。そう、この頃には”考える”パワーがかなり落ちており、名前を考えるこの知恵を使う作業からの逃避思考が始まるのです。
今回の大阪でも、ある日、マネジャーから”梶川さん、ドアに1・2と張り紙があったのですが、まさかあれが部屋の名称じゃないですよね?”との質問。ギクギクッ!!”え~っとわかりやすいから、番号もいいんじゃない?””冗談じゃないですよ、ちゃんと名前くださいよ~”そっそうだよねえ・・頑張ります・・しくしく(今日はもう無理)。
そこから、一人ブレストに取り掛かり、あ~でもない、こ~でもないと唸る日々が始まります。今回の部屋は7つ。チャクラと日本の色を組み合わせた名前にすることにし、そこから名前を選びます。と、基本構想は決めたのですが、そこからがまたまた・・。それはなぜかと言うと、日本の色は本当に多いのです。微妙な色彩、そして名前の持つ意味の幅。例えば、赤だけで30種類、オレンジと黄色の境目がはっきりしない、青は100種類以上あり。。
名前から得るイメージはポジティブなものでありたいし、五感も綺麗で、漢字の意味にも関連が欲しい・・。と思うとまた一からやり直し。という作業を繰り返し、決まった名前は”くれない(赤)””やまぶき(オレンジ)””なのはな(黄)””あさぎ(ターコイズ)””るりいろ(青)””ときわ(緑・ピンク)””あやめ(紫・白)”の7つです。チャクラの色には、身体の部位を表す意味と、精神や感情を表す意味があります。たとえば、赤は生命力や情熱、オレンジや社会的評価や成功、緑は愛や調和を意味します。
今回、私が選んだ名前で、一番気に入っているのは、”ときわ”です。漢字では常盤、英語ではEvergreenと表記されます。とこしえの緑、という意味合いから、カップルルームの名前に選びました。チャクラとしては心臓・肺を表しますが、このチャクラが緑とピンクを表すというのも、人の愛情をイメージさせて、とても素敵です。
それにしても、改めて感じる日本の色の豊かさ。このことに気づいただけでも、”番号でいいか”に逃避しなくて良かったなあと思います。かくして、ようやく付いたお部屋のプレート。たったこれだけですが、長いなが~い思案のアウトプットです。職人さんたちが取り付けの作業をする間、横でじ~っと見つめてしまいました。