「里山資本主義」を読みました。藻谷浩介さんとNHK広島取材班の共著です。フィールドワークと概念的思考で論理が展開される、説得性の高い本です。
今日も、日本の借金が1000兆円を超えました!と朝の番組で報道されていましたが、一体何にお金を使っているんだろう?というのが素朴な疑問です。エネルギーや社会保障と言うけれど、やり方を変えれば、そもそもそんなにお金はいらないだろうに、と思っていた疑問に、この本はかなり答えてくれました。個人の生活の在り方だけでなく、国全体の方向を示していると感じています。
地方に行くと(そもそも私も地方出身者ですので”行くと”というのはちょっと変な表現ですが)、ある意味で本当に豊かだと感じます。富山のプロジェクトを東京出身の方々とご一緒すると、”豊かだ~豊かだ~”とおっしゃるのですが、おそらく、東京以外の地方都市はだいたいこんなものです。家は広く、食は豊か、時間もたっぷりあるし、遊ぶことにもそれほどお金はかかりません。私が大学進学で東京に出てきたとき、テニスサークルなるものが、コート取りに新人を並ばせることを知り、唖然としましたが(宮崎では思い立ったらすぐテニスできます)その料金で二度びっくりでした。私は東京ではゴルフをする気になれないのですが、宮崎に戻ったら、日々楽しくラウンドしたいと思っています。地元向けのゴルフ場であれば、ランチ(カレーかラーメンですけど)がついて3,000円ぐらいです。
それでもなかなか、地方に人の流れが向かなかったのは、”都会にいないとできないこと”があるからです。都会に居ることのリスクやコストと、都会で得られる機会をどうバランスさせるかが、この本に書かれている、里山資本主義が実現できるかどうかのポイントだと思います。
断片的にはこの本にも書かれているのですが、実は地方の豊かさを理解し、その価値を高められるのは、都会生活を経てきた人なのです。今、かつてないほど、地方の暮らしを見直す機運があり、かつ、都会で豊かな時代を過ごし、知の集積がある人たちが、リタイアの時期を迎えています。この人たちを惹きつけられる場所や仕組みがあれば、一気にその場所の競争力は増すように思います。(ある意味軽井沢はその一例です)
かなり古い話になりますが、篤姫や和宮の本を読んでいると、いかに江戸好みが田舎っぽく、京都好みが洒落ているか、といったくだりが何度も出てきます。この時代、東京は今ひとつで、京都が格上だったんですね。イギリスやフランスにも、似たような話が出てきます。要は、トレンドや情報発信の源は価値観や世の中の流れで変化する、ということ。東京だって永遠に文化の中心ではないはずです。政策で地方主権を進めるよりも、地方に”素敵なライフスタイル”を創り上げる方が流れを変えるのは効果的かもしれません。
既に、優れた地方首長さんたちは、活発に動いています。こういった考え方で地方活力が増し、日本が新しい価値観で再生する時代は、地方間の差がはっきりする時代なのかもしれません。この本には、中国地方が事例として取り上げられています。基本的な考えは同じでも、北海道には北海道の、九州には九州の答えがあるのだと思います。
とっても良い本。お盆休みにぜひご一読!