社会人になって最初の職場、コンサルティング会社での服装はスーツ・スーツ・スーツ。バブル華やかなしり頃で、同年代の女性たちは、かなり着飾っていました。ランチに行くにも、夜のお出かけにも浮いてしまう堅いスーツ・・。これが嫌で、ちょっと派手な服にしようかなあ・・と思っていたある日。
”とにかく、世の中にこれ以上ない程、地味でダサいスーツにしろ!”との上司からの一言。文句言う気満々の私の表情に気付いたらしく、”未熟なうちは、形で誠意を見せるしかないんだ。 腕を上げて、何が何でもこの仕事はあなたにお願いします、と言われるようになったら、好きな恰好をすればいいじゃないか”とのお言葉。深く納得し、その後は、お言葉通り、この上ないほどの地味なスーツ。
確かに、まだ20代前半なのに、地味なスーツを着て夜中まで働いていた私は、それだけで一定の信頼を得た気がします。失敗も足をひっぱることも山のようにあったと思うのですが、”これからだよね、頑張って!”といつも励ましていただき、申し訳ないような気持ちで仕事をしていました。
そんな昔を思い出す、ある出来事がありました。
遠方からの来訪者を迎えた日、改まった機会ではなかったので、私は少しカジュアルな服を来ていました。が、ほぼ一日移動に費やしたであろう2人は、スーツ姿。暑い中の移動、本当に大変だったでしょうに。ああ、悪かったな、と内心激しく後悔しました。ここに来れて嬉しい、時間を取ってくれて有難うございます、と笑顔で言われたとき、その姿勢に胸を打たれ、本当に誠心誠意、この人たちの成長をサポートしようとの思いを新たにしました。
対照的な出来事が本日。
評価面談でのこと。通常は職場での面談なので、スタッフの服装は制服。ちょっと事情があり、1名のみ本社での面談になりました。猛暑を理由に、私自身カジュアル路線の日々でしたが、今日は少し綺麗めな服装で出社しました。良い話も悪い話も、両方きちんと伝えなくてはいけない、朝から色々考えながら事務所に入りました。そんな私の目に飛び込んできたのは、リュックにボーダーシャツ、足元はクロックス(これにはある理由もあるのですが)といういでたち。私なら、高尾山に行くスタイルです。
セラピストにとって、身だしなみは仕事の一部であり、重要な評価基準です。私服での本社打ち合わせの折、どのスタッフも、清潔感のある丁寧さのある服装で訪れます。それによって、こちらも敬意を感じるものです。
面談対象者は、この”敬意”に関して問題を提起されていた人でした。人それぞれ受け取り方もあるし・・と、この瞬間までそれほど重く考えてはいませんでした。むしろ、”そんなに神経質にならなくても”となだめていたのですが、この服装を見て、一瞬で理解できた気がしました。”この人にとって、他人は意識するような存在ではないのだ”ということです。
たかが服装と思いがちですが、残念ながら、面談の内容は服装そのままの結果でした。たかが服、されど服。本当に多くのことを語ります。