本日の日経MJに、オーガニック化粧品のガイドラインについての記事が出ていました。実は日本には、”オーガニック”と表示する際の規制がありません。天然由来とか、オーガニックと商品名に書かれていても、原材料の多くは化学合成品、という商品が溢れています。今頃・・という印象は否めませんが、公の取り組みになったことは歓迎したいと思います。
この現実を私が理解するようになったのは、自社で商品を作り始めたからです。当初は、自社ブランドを作ることにはあまり興味が無く、オリジナルのホテルアメニティを作って欲しいと依頼されたことがきっかけでした。色々試作する中で、直面した問題、それは”どうにも価格が合わない”という現実でした。こちらが、”イメージ”で伝える中、使えない原材料・使える原材料をOEMメーカーさんが選んで、提案してくださいます。小ロットだから割高になる、という部分を差し引いても、全く合いませんでした。
世の中には、”オーガニック””天然精油配合”といった商品が手頃な価格で並んでいます。質感もいいです。それなのに、なぜ依頼先には出来ないの?と違和感を持ち、かなり無理な要求をしたと思います。そんな数年を経て、ウェルネスに関わる人間として、きちんと理解しておいた方が良いと思い、昨年は、腰を据えて化粧品のことを勉強し始めました。
専門家による指導を受ける中、理解したことは、世の中にあふれる商品の多くは、驚くほどに、化学合成品が多いという現実でした。ドラッグストアで低価格で並んでいるものなら、消費者もそう理解します。問題は、”オーガニック”の顔をして、数倍から数十倍の価格で販売されながら、中身とイメージに大きな乖離のある商品が存在することです。(敢えてブランドは言いませんけど)
誤解を恐れずに言えば、私は合成品そのものを否定しているわけではありません。天然素材の開発は、質感の向上において大きく進歩していますが、それでも、なめらかにする、落とす、といった界面活性や乳化において、課題があります。そしてコストの開きは言うまでもありません。
オーガニック、天然、植物性、化学合成品、それぞれの利点とマイナス面があります。それを理解して使う機会を分けることが重要だと思うのです。
質感とコストの理由を化粧品の勉強会で学びつつ、この数年、頻繁に現場に足を運びました。栽培の現場、採取の現場、保管の現場、蒸留・浸出・圧搾の一次加工の現場、容器を作る現場、充填の現場、印刷加工の現場です。加えて、分析や検査の現場にも立ち会いました。
オーガニックは万能ではありません。でも、物によっては、オーガニックや無農薬であるべき、もしくは残留農薬がゼロであるべき商品も存在します。それは精油です。植物の種類にもよりますが、精油の分子の細かさは、経皮吸収を可能にします。身体中を巡り、その後排出される作用を持つものである以上、考える最上の安全が確保されるべきだと思います。
それから、化粧品の話からは外れますが、野菜において、消費者の視点で見れば、減農薬野菜とオーガニック野菜を比べた際、オーガニックに優位性はありません。みかけ、栄養価、美味しさ、実はどれも劣ります。葉物、果実など、種類でやや異なりますが、少なくとも、”オーガニックだから美味しい!”という科学的調査結果は得られていません。減農薬は、農薬を絶妙にコントロールし、収穫時には農薬が残らないように調整して作られています。肥料も使用しますので、実は大きく、色もつやつやしています。甘味もあります。じゃあ、オーガニックに何の意味があるのか?それは環境と作り手への安全をどう考えるか?と言う利他の意識です。農薬は野菜に残らなくても、海には流れていきます。使用する人が100%安全なわけではありません。
といった事を色々考えながら、私自身が100%納得するオイルを作ってもらい、新しいトリートメントを始めることにしました。その経緯は、またご紹介したいと思います。