梅シロップが夏バテ予防を助けてくれるように、植物は、その恵みで動物を助けてくれています。ただ、それは結果的にそうなっているだけであり、植物が望んでそうなっているわけではありません。生き物の最大の目的は種の保存です。(人間は忘れかけていますけど)どの意味で、植物が歓迎するのは、受粉を助けてくれる蜂や蝶、それに種を運んでくれる鳥や小動物ということになります。あまり人間の貢献はなさそうです。
今回、新型コロナでウィルスや菌への注目が高まっていますが、ウィルスや菌と闘っているのは人間だけではありません。実は植物もそうです。菌やウィルスにやられてしまうと、枯れてしまい種の存続が成りません。そこで植物は、抗菌作用・抗ウィルス作用を身につけていきました。このすさまじさを実感したのは、屋久島に行ったときのことです。屋久杉は樹齢1000年を超えた杉にのみ与えられた名称です。縄文杉を筆頭に、樹齢2000年、3000年と驚異的なご長寿杉が自生しています。世界で唯一の場所です。ここが何故すごいかと言うと、一般的に樹木は数百年が限度とされており、それを超えると、根が菌にやられて腐ってしまうからなのだそうです。366日雨が降ると言われ、足元をびっしり苔が覆う屋久島の森。多分、ここの杉が持つ作用は、抗菌を超えて活菌作用なのかもしれません。
虫とも戦います。快適なリゾートの印象があるオーストラリアですが、自然環境は過酷です。エアーズロックのあたりは高温+乾燥ですし、海岸沿いに行くと湿地が広がります。原住民が住んでいたところをイギリスが領土にし、政治犯を送り込む流刑地にしたのが西洋化の始まりですが、開拓当初は、感染症で多くの人が無くなったと記されています。湿地帯なので、病気を運ぶ虫が多い土地なのです。が、そんな場所でも、虫が一匹もいない場所があります。ブルーマウンテンというユーカリやティーツリーの森です。精油が立ち上ることで、緑の森が青く見える瞬間があることから、この名前が付いたそうです。オーストラリアは近代化が進み、クリーンなイギリスといった印象の場所ですが、虫だらけのエアーズロックと移民記念館を見た後だったので、かつては虫が溢れていた、というのがようやくイメージできるようになりました。ティーツリーは昆虫忌避の代表格の精油ですが、これも木々が我が身を守るすべとして身につけたものだったのでしょう。ブルーマウンテンが森中で、”あっちにいけ~!”と虫に叫んでいるようで、ものすごく強烈な印象として残りました。
もう一つの昆虫忌避植物、シトロネラ。こちらはティーツリーとはまったくの別物で、イネ科の植物。同じような作用があると、同種の植物を想像しがちですが、こちらはアジアを中心とする湿地帯で誕生した作用だったのでしょう。自然環境が厳しいところで生き抜いていった植物は、いい香りだけではなく、動物の神経を麻痺させるような強い作用も持っています。まさに生命そのものに作用するほどの働きです。こういうタイプのものは、効能がはっきりしていて有用性がある一方で、使い方に注意が必要になります。
抗菌力や抗ウィルス力が培われた環境を見ると、植物のパワーは本当に偉大だな、と実感します。