このところ、ホテル関係者にお目にかかる機会が続いています。
第1回目のMTGで、まず言われることはほぼ間違いなく”ブランドスパを入れたい”そうでなければ”直営にしたい”の2点です。その前が”エステティックサロンをテナントで入れる”だったことに比べると、大変な進歩なのですが、あまりにも同じ質問が続くので、考えをまとめておきたいと思います。
私はこれまでに、ウィンザーホテル洞爺で直営を立ち上げ(ブルームスパトーヤ)、フェニックス・シーガイア・リゾートにバニャンツリースパを導入する交渉と立ち上げ調整を行い、今回、軽井沢プリンスホテルとグランドプリンスホテル広島に業務提携の形で、スパの運営を行い、うち、軽井沢プリンスホテルのプロジェクトには、シンガポールのあるブランドスパの粧材を導入しました。
あまり色々やるつもりはなかったものの、考えてみれば、色んな運営形態や交渉形態をオンパレードで経験したことになります。
まず、ブランドスパですが、数年前であれば、日本のスパと海外のスパブランドの間には、大きな能力の差がありました。しかし、そこは勉強熱心な日本人のこと、日本にも数件のスパオペレーターやコンサルティングの会社が出現しました。レベルの差は色々あるものの、強みとしては、日本の顧客の要望に応えやすい柔軟性があるということが挙げられます。
著名スパブランドといっても、各社間の差はかなりあります。運営マニュアルやトレーニングマニュアルが無い、なんていうところも珍しくなく、そこが強みとしている化粧品が日本には持ち込めない、肌質に合わない、ということも多々起きています。また、”ブランド”といっても実際問題、スパブランドの知名度は業界の人々が思っているほど高いものではありません。
ブルームスパを作った後、多くの雑誌に取り上げられたことで、知名度が上がり、その後のリサーチで、日本においては、ブルームスパの方が一部の海外スパブランドよりも価値がある、という結果が出たことがありました。その間わずか1年です。
既に出来上がっているノウハウが欲しい、という話も良く聞きますが、残念ながら、規制の問題などもあり、海外スパブランドの運営上の利点の多くは、日本で享受できません。バニャンツリーの導入の際、何度も公的機関と交渉を重ねた立場としては、情けなくもあり、がっかりすることでもありました。優れたセラピストやトレーナーをタイから連れてこようとするにしても、まず膨大な書類、受け入れ手続き、審査が必要になります。そして日本にようやく連れてこれても、トレーニングはできますが、お代を頂戴することはできません。
大学を出ていて、英語も堪能、技術も人柄も素晴らしいというタイのシニアセラピストが日本に来てくれるにあたり、どうしてこんな不当な扱いを受けるのか、と半ば怒りながらも、この面倒な作業をホテル側で行う人間はほとんど居ないだろう、という懸念も持ちました。実際に、ホテルの人事はもううんざりしてしまい、もう手伝えない、とお手上げ状態になってしまいました。シェフを海外から呼ぶのに比べても、信じられないぐらい難しいのです。
といった現実、そして直営、といってもじゃあ誰が責任者になるの?といった大きな疑問。
などなどを経て、私はこの質問には、”よほどの覚悟が無いかぎり、どちらもお奨めしません。”とお答えすることにしています。簡単に考えておられる方が多いのに驚かされますが、実際問題、結構大変なんですよ・・。
確かに、ブランドスパの導入も直営も、本当にそれができればホテルには大きなプラスになります。でも、じゃあ、誰が・・・?
海外の5ツ星ホテルでも、自前主義のマンダリンに対し、ペニンシュラはグローバルでESPAと提携し、次々にホテルスパを導入し、好評を博しています。どちらにもそれぞれの考えや良さがあると思いますが、このペニンシュラとESPAの取り組みには、個人的に大いに注目しています。
ホテルスパも少しずつ歴史を重ねてきています。様々な試行錯誤を重ねて、日本に合った道を見つけていければいいなと感じています。