地震の後、連日避難生活の様子が報道され、本当に胸が痛みます。せっかく助かったのに、物資がない、薬が無い、と訴える風景は、これまで天災のたびに繰り返されていますが、まったく改善が見られません。日本人のおもいやり、とか頑張ろうの気持ち、と精神論が語られますが、被災された方たちに更なる負担を強いるのはいかがなものかとしみじみ思います。お風呂に入れてあげたい、温かくおいしいものを食べさせてあげたい、との気持ちは、誰もが抱くものです。
一方で、私が日々目にしているものは、キャンセル続きで落胆するホテル関係者の姿です。ここには快適な部屋もおいしい食事も、自分たちにできることは何でもしてあげたい、と強く願うスタッフもいます。が、日々続くキャンセル、実際に交通手段がなくて来れない、というケースより、こんなときに旅行やイベントはちょっと・・と自粛される方の方が多いのです。
であれば、この二つをマッチングさせれば良いのではないか、という案が浮かびました。例えば、現在の避難生活をされている方が約50万人、1泊2食を10000円で提供するとして、50億円/日。1か月として1500億円、3か月として4500億円です。
北海道の温泉街、熱海の温泉街、ハウステンボス、シーガイア、リロホールディングスが組織している保養施設など、実は日本のホテル・リゾートは空き室だらけなのです。日本の特徴として、夏休みやゴールデンウィーク、年末年始だけに集中する傾向がありますので、長期で部屋を使ってもらえることは経営の安定にもつながります。この1泊2食10000円という金額は、ホテルが慈善事業ではなく、最低限の利益が出せる基準で設定すべきだと思います。(かつ、支払いは週単位で)
日本はホテル協会の組織力、JTBの管理力がかなり強いので、参加可能なホテルが協会に申込み、日々受け入れ施設を増やしていけば、十分に実行可能だと思います。自治体が受け入れることができないのは、施設はあっても、受け入れをするスタッフや仕組みがないからです。一方で、日本の大型ホテル・旅館は、団体受け入れの能力は世界でもトップクラス、じつは隠れた能力なのです。
寄付や物資がどのように使われるのか、今一つ見えにくい仕組みであることが、善意の集積をためらわせています。例えば、1万円寄付すれば、一人の心地良い一日を提供できます。受け入れホテルに地元JAが農産物を寄付してくれれば、同じ予算でも、ずっとおいしい食事を提供できます。衣類や生活必需品も同様です。今、国の機能より自治体の機能の方が優秀である中、受け入れホテルがある自治体の人は、その地域分の寄付物資をとりまとめて提供すればよいのです。国からの予算と個人の寄付を合わせ、民と官の仕組みを連携させればよいと思います。
実は以前シーガイアのリニューアルのパーティーを行った際、県・市・JA、ANA,そして地元観光ボランティアの方々に協力してもらい、力を合わせて東京からのメディアにお披露目をしました。シーガイアは新しくなった施設と部屋を提供、JAには多くの食材を無償提供していただき、県や市には観光地をまわるバスを手配してもらい、ANAには格安で航空券を提供してもらいました(この分はシーガイアで買い上げ)協力しようという意思さえあれば、それぞれが持っているもので大きな成果を出せるのです。そういう意味で日本には予備のインフラも資金もあると感じました。
この案、自分で考えたわけではなく、当時の上司にアドバイスしてもらったものです。海外では当たり前のことで、互いの信頼関係と調整能力さえあれば、必ずできると言われて、全力で動き回りました。
災害で肉体的にも精神的にもダメージを負った方たち、その後数か月ゆったりした生活を送ることを誰も責めないはずです。今、災害復興費が10兆とか20兆とか言われていますが、そんな議論をする前に、まずは避難生活をしている人の日常生活を取り戻してあげてほしい。冷静に計算すると大した金額ではないのです。
ガンバリズムを賞賛するのではなく、冷静に仕組みづくりを、と切に願います。地震列島で生きていく中、誰もがこの避難生活に直面するリスクを抱えて、暮らしているのです。