私が、仕事としてホテルスパに関わるようになったのは、北海道のウィンザーホテル洞爺の開業がきっかけです。早いもので、もう15年になります。
この頃の日本のホテルは、海外の一流をいち早く導入することが主流でした。ウィンザーにも、ミシェル・ブラス、エリック・カイザー、ジェラールミュロなど、フランスの食ブランドが勢ぞろいしていました。ブラスの素材への姿勢、カイザーの徹底した職人気質など、勉強になることは山のようにありました。日本人のゲストは、海外にいかずして、フランスの一流を食することができると、喜んでくださっていたと思います。
スパは、スクラブなどに北海道の素材を使用しつつ、ジュリーク、デクレオール、ソティス、アルゴテルムなど、これも海外ブランドを揃えました。これもまた、”北海道でこんなトリートメントが受けられるなんて!”とご好評いただいたと思います。
でも、海外のホテルショーケースに出ると、必ずしも高い評価は得られません。”借り物だらけだね”そう酷評されたのも事実です。
その後、日本にも、海外の5つ星ホテルが進出してくるようになりました。和の建築要素を取り入れ、日本の職人に敬意を払って起用し、そしてスパのトリートメントにも”和”を取入れようとします。面白いことに、日本のホテルチェーンは、海外ブランドに”日本初”を求め、外資は、日本で文化や工芸の専門家を探そうとします。
大阪にALL THAT SPA OSAKAを開業するとき、ホテル側から提示されたのは、" In the know"という考え方でした。せっかく日本に開業するんだから、南の島やスイスの山奥のものは要らないと思うよ、とアドバイスを受けました。スパのコンセプトを話し合う中、2つの新製品を入れることにしました。一つは、フランスの最高級スパコスメ、THEMAEを導入すること。茶文化に敬意を表して開発された商品は、すでにフランスや中東で高い評価を得ており、ジェットセッターの間にも愛用者が多いことで知られていました。そして、もう一つは、オリジナル製品を作ってみること。しかもフェイシャルの。
このフェイシャルラインには、日本の素材と技術を詰め込みました。米と桜。保湿と抗糖化。スイス系のアンチエイジングコスメなど、あらゆる商品を使いこなすゲストが、5本10本とまとめ買いされるようになりました。もちろん、海外からのゲストにも好評です。この化粧品の導入に併せて、整体の考えを取入れた手技を開発しました。この商品と手技が、国内外のスパフリークに、高く評価されたことは、大きな自信になりました。
試行錯誤を重ねて、今回は、ボディ製品を作ってみることにしました。とても長い時間がかかりましたが、その分、じっくり学び考えることができました。”五感”とか”ホリスティックケア”という言葉の意味も、実感しながらプロセスを踏めたと思います。
ずっと気になっていた”借り物だらけだね”という評価に対する、私なりの答えの始まりです。