私の古巣である、ボストンコンサルティンググループ(BCG)の元同僚たちと、神楽坂で飲み会をしました。きっかけは、最近広島に旅行した先輩にその様子を聞きたいな~と思ったことだったのですが、せっかくなので、会いたい人、話したい人にFBで連絡を取ったら奇跡的に予定が合い、集合することに。
BCGの繋がりは面白くて、勤務時期が重なっていない人でも、話し始めると一気に距離が縮まり、議論が盛り上がります。転職した、上場した、結婚した、と様々な折に集まる機会があるのですが、話が盛り上がりすぎて、たいていは閉店までお店にいます。
たまたま人材育成に関わっている人ばかりだったため、色々質問し、とっても勉強になりました。人材育成と言っても、グローバルマネジメントを国際基準で研修する、国内大学基準で研修する、日経やダイヤモンドなど、国内ビジネスメディアが主体となって研修する、地方自治体のリーダーを育成する、と分野は様々。この1時間だけで本が書けそうなぐらいの濃い話でした。
今、リーダーシップ研修の旬なテーマと言えば、女性の育成とグローバルで活躍できる幹部の育成です。自己流で研修をなさる講師も目立つのですが、国別、企業別のリサーチや、長期間にわたる研究をベースにその方向性を示す話を聞き、多くの学びがありました。
話を聞きながら、自分自身のことを考えていました。実は私、リーダーシップ研修を受けたことがありません。外資の事業会社2社に勤務し、研修プログラムはあったのですが、出張だの消費者調査だので、やたらと忙しく、後回しにしているうちに、転職してしまいました・・。素敵なリゾート施設での研修もあったみたいで、何だかとっても損した気分。
組織に守られている立場から、突然経営幹部になり、組織を率いたり資金調達をする立場に押し上げられ、怒涛の日々を送ったことは、「SPA IN LIFE」のTHE WAYの章で書いた通り。このテーマの本ではないので、かなり端折って書きましたが、雰囲気は伝わると思います。この私の日々をご存知の方から、”修羅場を経験した”と言われ、この人材育成をテーマに、修羅場の作り方、修羅場の乗り越え方、といったお題でヒアリングを受けることもしばしば。
何度かヒアリングを受けるうちに、自分の中にはいくつかの疑問が芽生えてきました。まず、修羅場は作れるものだろうか?ということです。誰も大変な経験をしたいと思って仕事を選ぶわけではありません。私にしても、ワクワクする、夢のあるプロジェクトにいちスタッフとして参画したつもりでした。それが相次ぐ状況の変化で、矢面に立つことが増えただけです。そしてなぜ本来はスタッフだった私が矢面に立ったかと言えば、責任を持って仕事をする、という当たり前のことをしていたら、いつの間にか私しかいなくなってしまっただけなのです。その後も、いくつか大きな壁を乗り越えるプロジェクトが続きましたが、場数を踏んでくると、ある程度は予見できるようになりますし、対処方法も考えつくようになります。
この食事会に集まった人たちは、第一線で活躍している方ばかりですが、多かれ少なかれ、私が横から見ていても、頑張っているなあ、(言い換えれば大変そうだなあ)という瞬間を経てきた方ばかりです。だから、リーダーシップについてもトレーニングについても、本当に現場感ある、愛ある話がどんどん飛び出しました。
リーダーシップ研修に出たことが無い私は、この研修の是非について語ることはできないのですが、私自身の経験から言えば、様々なことの積み重ねによる、その時点の人の資質の方が大きいような気がします。
例えば、当社の中でもマネジャーなど、リーダーシップを発揮するポジションがあります。スパマネジャーの経歴がある方でも、実際にリーダーとして機能する方が一部に限られる中、セラピストとして入社した中途スタッフで、そのポジションに就くと、驚くほどの力を発揮する例もあります。社会経験を重ねる中、潜在的な資質を身につけてきたのだと思います。
そういう方の特徴としては、1)責任感が強く、最後までやり遂げることにこだわる 2)その結果、技術や知識研修の習得度も高い 3)人の話を理解する力が高い 4)業務を通しての把握力や思考力が高い 5)感情の起伏が少なく精神的に安定している、といった点が挙げられます。これからは、中途入社組だけでなく、新人採用の際に、どうやってこの資質を見出すのか、入社後に強化してもらうのかが、課題になります。
残念ながら、資質が無い方の場合、どれだけ研修をしたり、資料を用意しても、”聞いていません””教えてもらっていません”を繰り返し、自ら答えを見出す姿勢が見られません。コツコツやり遂げるという意味で、英語の試験を評価基準に導入しました。接客業務で必要であることもあるのですが、社会人になって試験に真摯に取り組むことは、必ず何か得るものがあると考えてのことです。
日本では、昔より、”習うより慣れろ”、”技は盗むもの”という考え方があり、伝統的な職種や職人の世界では修行という概念が根強い傾向にあります。それに対し、海外から職種の定義(Job Description)や研修という概念が入ってきて、会社が提供するのが当たり前、という流れになってきています。それぞれに良い点や課題があると思うのですが、私は、自分自身の経験や、これまでの社内の状況を見て、やや”日本流”に傾いています。本当に小さな会社ですが、BCGのご縁で、最先端の人材育成の考え方に触れ、それを会社の方向性に活かせることはとても幸運なことです。
さて、幸せなことがもう一つ。何となく集まった食事会でしたが、出版のお祝いに!とお花をいただきました。本の表紙の色を思わせるアレンジです。もう退社して22年も経つのですが、いつまでもこうやって励ましていただき、本当に有難いかぎりです。