私が尊敬している経営者の女性がいます。外資系のトップを歴任し、今は、ご自身で起業なさって大きな成功を遂げられています。組織の一員として高いポジションについていても、実際にご自身で起業した後、大成功なさる例はあまり無いので、変わらぬ大活躍に、流石だなあと、益々尊敬の念を高めています。
随分昔のことになりますが、ヘッドハンターから連絡があり、あるポジションを提案されました。この女性の方のポジションでした。不思議に思って、理由を聞いてみると、この方が社長を引退なさるにあたり、後継として推薦があった、とのお話でした。実は共通の知り合いは多かったものの、直接お目にかかる機会は無かったので、とても驚きました。このポジションを受けるかどうかは別として、お話を伺う機会を得られると思って、プロセスを進めていただけるようにお願いしました。結局、双方あまり合致点がなく、このお話は形にならなかったのですが、その方がお仕事なさった環境を知り、その上で色々お話を伺えたのは、本当に良い経験になりました。
私より少し上の世代なので、雇用機会均等法前の先輩になります。女性が働くこと自体が、大変な努力を求められる時代です。理不尽さも不当だと思うことも、むなしいことも山のようにあったと推察します。そんな中で、どうやって道を切り開いてこられたのか、質問したところ、答えはとてもシンプルでした。
”どんな場所でも、仕事をいただいた以上、相手の期待を上回る仕事を必ずする”
仕事をいただけること自体がとても有難い、という一言は、本当に胸に染みました。その方が着実に道を切り開き、成功を重ねてこられた理由がわかる気がしました。
女性の活躍、女性経営者が表に出ることが多くなった昨今でも、ほとんどメディアには登場されません。講演会やセミナーの主催者、知り合いの編集者、それに政府の審議員を選定している方たちに、”何とか紹介してもらえないか”と頼まれたことがあり、お話を繋いだことがあるのですが、”社業に集中したい”との理由で受けていただけませんでした。起業された当時、数社の社外取締役をなさっていたので、そういったポジションは受けられるのかな、と思っていたのですが、取締役会で学べることは学び、後半は、会社の運転資金稼ぎになっていた、と笑って教えてくださいました。
仕事でうまくいかない、報われないと思うことは当たり前に起きる。相手がどうであろうが、自分はいつも自分に恥じない仕事をするしかない、期待を上回っていると思っても、それは相手にとって最低限かもしれないし。とにかく前に進むしかないのよ、といったエネルギーいっぱいの言葉は、今でも私の指針になっています。
その方が手掛けておられる事業ですが、前職日本法人時代との比較で言えば、5倍から10倍になっているのではないかと思います。最初は本当に小さい規模で、趣味程度になさるのかと思っていましたが、やっぱりすごかった。仕事は考え方と継続力だなあ、としみじみ感じる先輩の背中です。