ホテルやスパの仕事に関わるようになり、20年以上が経ちました。私自身のタグ付けとして、”スパの人””ホテルの人”と認識されることが多いのですが、私自身は、ずっと”マーケティングの人間”だと思っています。
ネットが出現してから、マーケティングの手法自体は大きく進化しました。データの収集も以前に比べて随分容易になりましたが、本質は変わっていないように思います。マーケティングは、人を見ることです。だからこそ、経営そのものだと言われているのです。
コンサルティング会社に在籍している時期、日本コカ・コーラなどで実際に商品を担当した時期、多くのケースを見てきました。成功例、失敗例、その理由。どれほど時代が変わっても、分野が変わっても、背景にあるものはまた変わりません。
世界には、ダイナミクスがあり、それを動かす原動力は、感情と経済性です。
スパに関して言えば、マーケティングの基本になるのは、このグラフです。
実は、世界の観光業において、日本人旅行者はこれまで大きな役割を果たしていました。今、”やっと日本にも出来た~”と大騒ぎになっているアマンリゾートの初期の成功は、日本人旅行客に支えられていたと言っても過言ではありません。
私が、最初のスパを作ったのは2001年ですが、この時期、日本ではアジアブームで、アジア雑貨の店があちこちに出来、冬の西新宿で何とバリのケチャックダンスのフェアまで開催されていました。
出国した日本人が、海外で素敵なものを目にしたり、体験したりし、それを日本でも続けたいと望む気持ちが、日本のホテルを作り上げていました。フランスの**が日本初出店、イタリアの職人が来日、バリの本場で作った家具の内装など、日本のホテル内は、国際見本市のようでした。インバウンドはほとんど来日しない状況で、ホテルゲストの大半はちょこっと海外旅行を楽しむ層の日本人であり、それがゲストニーズだったわけです。
そこから、円安誘導がなされ、インバウンドゲストの来日が続き、量的には3000万人を突破しました。まずは量を追ったわけですが、一部にはアッパー層も含まれます。これでようやくホテルにおける顧客層が変わる時代を迎えるのです。
どの国においても、自国ゲストと海外からのゲストのバランスを取ることは、ホテルマーケティングにおいて重要な要素です。日本においては、自国ゲストのみ→徐々にインバウンドが出現、という流れになっていますが、逆の動きになっているエリアもあります。東南アジア、特にタイです。かつて、高級ホテルといえば海外ゲストが大半で自国ゲストの存在感が薄かった国ですが、経済成長を遂げる中、自国富裕層のマーケットが拡大し、それにつれて、欧州系のブランド人気が高まってきています。
日本においては、50年間以上、国内のゲストで観光を回してきており、異なるゲストを迎えるのはほぼ初めての状況です。だからこそ、課題が多い一方で、可能性は無限大です。