1月21日にオープンしたばかりの、東京新美術館に行った。青山から西麻布の交差点に向かう途中に突如出現した“緑のうねうね”がようやくベールを脱いだのだ。この美術館、日本においてはかなり革新的なことをやっている。
まずは、“楽しめる”施設が充実していること。ポール・ボーキューズ初のビストロ(ひらまつとのコラボ)出店とか、アートライブラリーがあったり、気軽なカフェとそれに続くスーベニアーショップがあったりと、トーキョーの“今”が盛りだくさん。そして、それぞれの空間もかなりイケている。
あと、ここはアートを保有せず、企画展を中心に展開するという。興味深かったのは、“異邦人たちのパリ”という展覧会の作品中、その多くが既に日本の美術館(国立近代美術館)の保有だったということだ。上野の森の中で展示されていたのか、大事に保管されていたのかはわからないが、今回、この美術館ができたことで、より多くの人を楽しませることになったのには、大きな意味があると思う。保有・保管に膨大なコストがかかることを思えば、絵を見る環境そのものを重視した今回の試みには心から拍手を送りたい。(日本もやるじゃん、という感じ。パチパチ)
海外の美術館と比べて、日本の美術館はつまらないなあ、と思っていた私にとって、これは嬉しいオドロキだ。企画展も面白かったけど、ここは本当に“来るだけ”で楽しい場所だと思う。
上野の美術館は立派だけど楽しい場所じゃなかった。以前、フランスのマルモッタン美術館展があったとき、モネの作品見たさに訪れたものの、空間、照明、人ごみにうんざりして、すぐに出てきてしまった覚えがある。あれじゃあ作品に対する印象も変わってしまう。
それに比べ、パリやNYの美術館は概ね楽しい。(その中にも差はありますが)リニューアルしたMOMAなんかとっても良かった。空間も楽しいし、カフェがたくさんあるのはもっといい。私にとっての“好印象”は、空間と作品が合っていることと、休憩するところがたくさんあって、マイペースで楽しめることなのだ。大体終日過ごすところなので、カフェやレストランのレベルが高いことは”must”なのである。
そういう意味では、メトロポリタンよりMOMA, ルーブルよりオルセー、よりもっとロダンやマルモッタン、という好みになってくる。日本では原美術館や根津美術館あたり。
“この作家のこの作品”という鑑賞の仕方もあるとは思うものの、私自身は作品と出会った”experience”そのものを大切にしたい。新しく出来る美術館やリニューアルの方向もそちらに向かっているところを見ると、きっとそう思っているのは私だけではないだろう。
美術館の中を歩きながら、スパだって同じだよねえ、としみじみ思う。“痩せたい、シミをとりたい、脱毛したい”といった機能や目的のためだけではなく、時間と空間を楽しむのがスパだ。こういう“experience”重視というのは豊かな時代の象徴なのだろうか。