本日の日経新聞の人脈追跡というコーナーにBCG(ボストンコンサルティンググループ)が特集されています。私の最初の勤務先で、大学卒業後、30歳になるまで丸8年間在籍しました。
何から何まで学ぶところの多かった会社でしたが、中でも、私がずっと感じていたのが”付加価値”という概念でした。BCGは、企業戦略立案で知られた会社ですが、その根本には、絶えず事業に付加価値を創造していく、との理念が貫かれています。価値のある事業構築=高い単価=高い利益率=安定した雇用=会社の成長と言えば分かりやすいでしょうか。
言うは易し・・ですが、当然そう簡単なことではありません。ときどき、コンサルタントは最初から答えを持っているのではないか?と勘違いされている方がおられるのですが、初めから答えがあり、その答案用紙にお化粧をして提出するだけならば、数億円というコンサルフィーを請求することはあり得ません。無い答えを導きだし、そこにしかない答えを見つけるからこそ価値と独創性があるのです。
コンサルティング会社といっても、一つの企業です。通常の会社のように日々社員が出勤し、一定時間業務を共にします。様々な企業のコンサルティングで学ぶことも多かったのですが、今思うと、業務中に学ぶことが本当にたくさんありました。
まず一つめは、先輩コンサルも、それこそ身を削るほどの勢いと情熱で業務にあたっていたということです。これでもか、これでもか、と分析をし、議論をし、より良い答えを導き出す姿に、妥協という文字はありませんでした。仕事に対して全力を尽くし、真摯に向う姿に、社会人1年目から接することができたのは、とても大きかったと思います。
あともう一つは、”価格と内容”ということです。BCGのフィーは絶対額で見れば高額です。仕事になり易く、低単価で売れる調査のようなプロジェクトは受けず、戦略1本に集中していました。これは、駆け出しのコンサルには厳しい状況で、他の会社のように、調査系のプロジェクトも受注してもらえないか、とお願いしたことがあります。そのときの答えは、”それは君たちのためにならない”というものでした。確かに、単価の安いプロジェクトは、そのときは楽かもしれないけれど、一度それに慣れてしまうと、本当に付加価値の高いプロジェクトを遂行できる能力はいつまでも身につかない、と諭され、価格に見合った内容を提供できるまで、精進しろ、それができないなら、ここにいる理由がない、と言われたものです。
この言葉の意味を本当に理解できたのは、シーガイアに着任したときでした。着任初日、全ての販促物を見せてもらいました。そこに並んでいたのは”あのシーガイアがこの価格!1泊9800円!!という安売りチラシの山でした。当初高級リゾートとしてスタートし、全てが高い、と不評だったシーガイアが一旦破綻した後、運営で入ったスターウッドがとった方法は、とにかく安くして稼動を上げる、という方法でした。当然これでは、いくら稼動が上がっても利益が出ません。どれだけコストダウンしても追いつくものではありませんでした。そして価格感受性はどんどん低下し、いずれは価格を下げても稼動が上がらなくなります。運営も営業も、価格で売る、ということに慣れきっており、質の低下は目に余るものがありました。
そこから追加投資やマーケティング、トレーニングを含む、アップグレード化への長い長い道のりが始まるわけですが、営業黒字を達成できた背景には、稼動と単価の両方が上がった、という地道な結果の積み上げがありました。
スパの運営においても、日々感じることです。セラピストが提供するサービスは、最終的には人の手でしかなし得ません。どれだけいい施設があったり、高額な化粧品を使用していたとしても、”対価に見合わなかった”と言われてしまえばそれで終わりです。自信が持てない、クレームを受けた、という経験を持っているスタッフには、より多くの練習をさせ、技術チェックにはより多くの時間をかけます。
セラピストを成長させてくれるのは、顧客です。これ以外にはあり得ません。会社がサポートできるのは、顧客の前に立てるようになるまでです。多くのセラピストが、顧客に評価されることで自信をつけ、更に学び、成長していくのを見てきました。そしてこれらの顧客は”安さ”を要求する方々ではありません。精進し、自分が提供できるサービスの質を高めつづける、というBCGウェイで確かなスパのサービスを作り上げていきたいと思っています。