スパの面白いところは、あらゆるところに”Sense of Place”をちりばめることができる点です。この言葉、ホテル業界の方が良く口にされますが、実際のところ、ホテルの建築や、内装、ソフトなどはかなり定型化してしまっており、かつデザイナーの顔ぶれも似たような感じなので、よほどこの領域に力を入れているオペレーターでない限り、似たり寄ったりな内容になっていることが多い気がします。
で、スパの話に戻りますが、私が一番気にするのは、ラウンジからの景色です。リゾートスパの醍醐味はこのラウンジにあると言っても過言ではありません。気持ちよく、うつらうつらしている状態の後、目に飛び込んでくる景色によって、満足度はうんと大きく変わります。
洞爺湖の中ノ島が見えるブルームスパ(ウィンザーホテル洞爺)のラウンジ、日向灘を見下ろしつつ、昼寝ができるカウチが置かれたシーガイアのバンヤンツリー、暖炉が置かれている軽井沢のSPA the Forest ,瀬戸内の海と空を眺められるSPA the Blueと素晴らしいロケーションのプロジェクトに恵まれていることを実感します。
スパの空間設計を行う折、まず私はラウンジの場所と面積を決めるところから始めます。ここから導線をさかのぼってき、トリートメントルーム→ロッカールーム→エントランスとおおまかな流れを決めます。一旦仮の図面が出てきてからは、あ~でもない、こ~でもないと悩みつつ、現場をうろうろ歩いて、悩みに悩んで最終の線を決めていきます。
新規で作る場合もあれば、既存の建物の改築、という場合もありで、いずれにしてもある程度の制限要項はあります。それをハンディとせず、いかにプラスに活かしていけるかは、どれだけデザイナーと息のあった共同作業をできるのかにかかっています。
私は建築のバックグラウンドはありませんが、共通言語を持てるように、建築雑誌をよく読むようになりました。あまりに大雑把な説明では、伝えきれないこともあるからです。写真を見てもらったり、実際の例を見に行ってもらったりとより具体的なイメージを共有化できるように工夫しています。
だんだん仕上がっていく作業はそれはそれは楽しいものです。(たまにあちゃ~もありますが)図面が現実になっていき、ラウンジからの景色を見る楽しみのために、スパを作るのかもしれません。