ここ数年スパに魅せられ、どっぷりの私ですが、私のバックボーンはマーケティングであり、それは今も変わりません。マーケテイングを学び、実践する中で、戦略コンサルティング、マスマーケテインング、ネットマーケティングに携わってきました。
コカ・コーラもリーバイスも、マスマーケティングの典型のように思われがちですが、現在の市場はそう甘いものではなく、ほとんど”個”に近い市場の捉え方をして、開発し、販売し、プロモーションをかけたものでなくては、生き残ることはできません。そうして育成した商品が爽健美茶でした。
ジョージアを担当したとき、ギネスにも載った消費者プロモーションに関わることになり、数千万通のハガキを全てDB化する、という暴挙にも加担しました。私自身も半信半疑でしたが、この時、缶コーヒーという超マスプロダクトを通してでも、それを選び飲んでくださっている顧客の顔が見える瞬間があり、体が震えるほど感動したのを覚えています。
顧客を知る上で、情報を取得したい、と思うのは当然のこと。消費財メーカーにとって、のどから手が出るほどほしい、ネット事業者はお金を支払ってでも欲しがるもの、それが顧客のプロフィールなのです。
ネット関連の仕事をしてたとき、どの業種が一番いいリストを持っているだろうか、と考えたことがあります。思いついたのがホテルでした。しかもリゾート。名前、住所、電話番号などはチェックインのときに入手でき、かつ、お部屋だけでなく、利用した飲食施設、スポーツ、買い物などその閉ざされた空間故に総合的な情報が手に入ります。かつお話する時間も豊富ですので、スタッフが多少気を効かせれば、趣味やどなたのご紹介なのか、などの情報も得ることができ、次のサービスや来訪促進に活かせます。日本の”老舗”と呼ばれるところは、これを当たり前のように続けてきているわけで、それが日本の”もてなし”の根幹だと思うわけです。
どこかでこの実体験を積みたい、と思っていたところ、偶然にもウィンザーホテル洞爺のプロジェクトに出会い、そしてまたまた偶然立ち上げることになったスパで、もっとも深く顧客を知ることのできるサービス”スパ”に出会います。スパではお体の状態やその悩みなども話されます。大変深い話になることもあり、これほどの話は医療機関でもされないだろうと思うと、その守秘について一層気持ちが引き締まります。
ウェルネスアリーナでは、現在業態の異なる施設を4軒運営していますが、その時点の売上げよりも”顧客の顔が見えているか”の点を厳しく見ています。それはサービスレベルを維持・向上させるのみならず、今後の成長を考える上で不可欠だからです。顧客DBの分析結果をもとに、メニュー改善の方向性、リピータープログラム、プロモーション計画などを考えます。
マネジャーには、マーケティング概論やCRMなどの講義をすることもあります。一旦枠組みを説明した方が、データを通じて何を見つけてほしいのか、どう顧客に語りかけてほしいのかがわかりやすいと思うからです。”数字は苦手””経営に興味は無い”と言っていたセラピスト出身のマネジャーが、”やってみたら面白かった!”と言ってくれるときなど、本当に嬉しい気持ちになります。
ウィンザーホテルやシーガイアのプロジェクトをやっていた折、現場に携わる社員にとってこそ、マーケティングの考え方は価値を持つ、ということを実感しました。(この時も時間を見て”授業”をしました)企画のみに終始するのではなく、分析し、企画してみたことの結果が目の前で起きる、成功したら継続・改良し、失敗したら見直す、ということを習慣にすることで、考えることが楽しくなるものです。
この頃、現場を統括するマネジャーからは、素晴らしい提案が続々と上がってくるようになりました。相談の中身もより深く具体的になってきています。顧客を理解したい、その期待に応えたい、という姿勢で学び続ける彼女たちは、優秀なセラピストであるだけでなくマーケッターでもあります。