新しくオープンしたホテルに併設されたスパに行ってきました。そこで感じたことは、”テナント化”の進行です。ホテルのスパが注目され始めたのは、都内で言えば、日航東京のZENとフォーシーズンズ(椿山荘)の開業が大きかったと思います。ホテルに宿泊し、美しい景色を眺め、プール、お風呂、サウナなどの施設およびリラグゼーション施設を使って、そのあとトリートメントを受ける、という体験に、”おひとり様ステイ”をする女性が続出しました。
その後は、ホテル側で一気にスパ熱が高まり、ここ数年開業した・リニューアルしたホテルには必ずスパがついている、という流れになってきました。ただし、残念ながら、”なぜ必要なのか、誰に対して必要なのか、そしてどんなものが?”との検討があまりなされなかった事例も多かったと思います。その結果、次々に出てきた声は、”うまくいかない”の大合唱です。(こういう場合、うまくいっているところは何も言わないものです)
そして、今度はその流れを受けて、スパのテナント化が進んでいます。化粧品会社系のエステサロンに、施設の投資も依頼して、場所貸しに徹する、というものです。経済性あってのものですし、ホテル側で運営しきれない、との判断であれば、中途半端な運営になるよりましだと思いますが、ホテルに滞在する醍醐味は無くなってしまいました。
質の良いビジネスホテル(しかも温泉・温浴付き)も多数出てきている中、高級ホテルに求めるものは、”上質な無駄”ではないかと思うのです。客室が立派、レストランが豪華も良いのですが、ただぼんやりできる美しい空間、ただ体を伸ばせる広いお風呂、ふかふかのタオル、家では洗濯できないようなバスローブに身を包まれる瞬間、数万円という宿泊費も惜しくなくなります。それはたとえ都心のホテルであっても、日常をリセットできる小さな旅なのです。
海外での例で言えば、パリやミラノのパークハイアットは、大きなスパのスペースは無いものの、お風呂・サウナといったウォーターエリアはきちんと準備されています。マッサージは外からセラピストが来てやってくれました。決して規模の大きなホテルではありませんが、いい意味での無駄は確保されていると感じます。
昨年オープンしたある高級ホテルのエステでは、施設内のリラグゼーションラウンジに入れてもらえませんでした。そこは”エステのメンバーーオンリー”なのだそうです。トリートメントが終わって、リラグゼーションラウンジに案内されるかと思っていたところ、更衣室にすぐ通され、化粧台の前に烏龍茶が運ばれてきました。ホームケア用の化粧品のセールスをずっとされ、ぽわ~っと眠かった気分が一気に無くなってしまいました。リラグゼーションルームのソファでちょっとのんびりしたいな、と思って”あっちに行きたい”と言ったところ、今度はメンバーシップの案内書を持ってきてくれて、これに申し込めばすぐ案内する、とペンを持ってこられ、もうウンザリ。
そこその宿泊料金を支払ってもこれなんだ・・・とぼーぜんとしました。これがテナント化いうものか、と実感した日でした。施設も立派、技術も悪くありませんでしたが、ホテルスパではないんだな、と妙に納得しました。
ホテルの方には”スパに行きたい”とはっきり伝え、案内された施設でしたし、予約も会計も、ホテルスパと同様にしてくれました。その意味では、ホテル側のサポートはしっかりしていたと思います。でも、テナントエステ側は、メンバーを増やすこと、化粧品を売ることが目的なわけで、そもそものゴールには大きな開きがあります。正直言ってこれは仕方がないことです。でも、滞在するゲストの立場で言えば、ホテルに宿泊した以上、それ相応のサービスは受けたい、と強く感じました。
新しくできたところは、一通り体験し、リピートするところは、私なりの”くつろぎ基準”で選んでいきたいと思います。