週刊ダイヤモンドのホテル特集号が出ました。題して”激変!日本のホテル”。毎年出る内容ですが、今年の記事は分析も取材も深くて、内容充実でした。ホテルマンでもこういったことを知らない人がおおいので、研修に使ってもいいほどです。
詳しくは、ぜひ雑誌を買って読んでいただきたいのですが、私が最近感じていることと、分析はほぼ一致しています。いちばんのポイントは、知名度や価格と実際に提供されるサービスの価値に不一致が生じていた、ということです。その事例は数多く・・
例えば、ペニンシュラの価格・ブラノドとサービスが見合っていたかというと、大いに疑問です。オープン当初、高額な宿泊料金にも関わらず、人であふれていました。客室もレストランも。しかしながらそのあと聞こえてきたのは”良くなかった、大したことない”の大合唱。そのあと、異臭騒ぎだのリーマンショックだのがあったにせよ、その当時宿泊した日本人客は、あまり影響のない層であり、満足しなかったから離れたのです。その一方で、帝国ホテルの評価はぐんぐん上がっていました。私の知人は、”宿泊料金は半額で、サービスは倍いい。つまり、4倍の価値がある。”と会食のたびに宣伝していました。客足が落ち込んだ後、今度は大幅な値下げを実施。しかしながらこれも”安くで使わせてやる”といった印象のあるプロモーションで、周囲ではかなりの悪評。実際、カフェなど外部の人でも使える場所は、ターゲットと言い難い客層であふれ、数少ないコアな客層はどんどん離れていきました。
紙面でも問題視されている、恵比須のウェスティンは、もともとサービスレベルが低く、以前私もガーデンプレイスにある会社に勤務していた際、会社でよく使っていましたが、いつも総務は怒鳴っていて、”この場所でさえなければ絶対に使わない”と言っていました。その会社が移転してしまったため、実力に合う集客しかできなくなった、ということだと思います。女性アルバイトの顧客情報漏えいが出ていますが、これは人員削減とかコスト削減の結果ではなく、もともと社員教育のレベルは低かったのだと思います。
つまり、”ハリボテ”が徐々に剥がされ、実状にあった価格・稼働になっていただけだと言えます。ホテル側が認識していない間にも、口コミはすさまじいスピードで広がっていきますし、何よりリピーターがつくかどうかにかかっていることを軽視しすぎた結果にすぎません。
一方で、急成長中のビジネスホテルはその対極にあります。客室もいい、サービスも適切、そして食事も。とてもよく顧客ニーズを把握しています。その多くは異業種からの参入です。
私もいくつか宿泊してみましたが、思ったよりいいのにビックリです。客室は狭く、ゆっくりできるとは言えません。しかし、大浴場は天然温泉。館内着もバスアメニティも良いものがそろっています。滞在中何回入っても無料。客室にはズボンプレッサー、リセッシュなど通常のホテル以上のものも揃い、ベッドやTVは最新型。机も広く、ネット環境も完璧。仕事もはかどりました。そして朝食はビュッフェですが、和洋ふんだんに揃い、お茶の種類も豊富。食後のコーヒーは部屋に持ち帰れます。これで5000円台(ある地方都市ですが)いつも使っていた外資系のホテルですと、この項目をカバーして(もちろん温泉はない)20000円でした。まさに4倍の差。もちろん客室の広さやロビーまわりの違いはありますが、機能的にはビジネスホテルの方が上だったりもして、実際使う上では優劣付け難い状況です。
こういっては何ですが、私はかなりのホテル好き。かつて国内出張も多かった時期、やむにやまれずビジネスホテルに泊まり、じめっとした煙草臭い部屋で気持ちが悪くなってしまい、その後はたとえ自腹を切ってでも、シティホテルを選び続けてきました。なので、多少安くとも、質の点でビジネスホテルにはかなりの抵抗感があったのです。その私ですら・・。
と、こういう話を”危機感”として既存ホテル関係者の方に話しても、真剣に耳を傾ける人はほぼ皆無。試泊の気配すらありません。顧客を理解し、ビジネスモデルを見直すという基本的な姿勢がない以上、競争力のないプレーヤーは退場し、やる気のあるプレーヤーが伸びる変換機に来ていることを感じます。
この記事、分析はとてもよくできていますが、危機の原因をリーマンショックに絞っているところがやや残念。確かにそれは外的要因として大きく、最大であることも否定しません。でも、登場するホテルのほとんどを利用したことのある私としては、外的要因がなくとも、遅かれ早かれもたらされた結果だと感じます。