利休が残したとされる利休七則。実際には、エピソードをもとに後世まとめられたものらしい、と言われています。どうやったら、お茶が上手になりますか?との弟子からの問いに、これを答えたと言われています。ええっこんな簡単なこと?もっと難しいこと教えてくださいよ~とせがむ弟子に、あなたがこれを完璧にできるなら、私は喜んで弟子になりましょう、と答えたそうです。
1.茶は服の良きように点て 2.炭は湯の沸くように置き 3.花は野にあるように 4.夏は涼しく冬暖かに 5.刻限は早めに 6.降らずとも雨の用意 7.相客に心せよ
この七則、読むだけで、静かで心地よい茶室が思い浮かぶようです。確かにルールといえばルールですが、相手を思う気持ち、状況に合わせて臨機応変に対応する、との考えが反映されていると感じます。
慌ただしさの中、茶道のお稽古を全うできなかった私ですが、お抹茶は本当に美味しくいただきました。今でも気軽に楽しんでいます。茶室でのお茶は、楽しみとしても素晴らしいものですが、私が本当に美味しく感じたのは、気分が落ち込んでいたときです。仕事や人間関係で悩んでいたとき、茶室に入り、飾ってある季節の花や、炭の柔らかな火の色、釜から上がる湯気、そして障子から差し込む光に、ほ~っとしたことを覚えています。イライラした気持ちが一気に収まり、”なるようになる”とスッキリした気持ちで帰路についたものでした。
利休の茶道が、戦国時代にその形の基礎ができたことを思うと、茶道の”もてなし”は、極限状態にある人をどうやって平静な状態に戻し、冷静な判断ができるようにするか、ということが原点にあったのではないかと感じます。
この七則、形といえば形ですが、その一つ一つが、本当に良く考えられています。個人的に私が感心したのは、6番と7番。どれだけ準備をしても、予期せぬことがおきたとき、そしてお連れ様までご満足いただけるか、このハードルは本当に高いです。茶会は、正客を想定して準備するわけですが、相客のお好みがわからない場合、そして何か良きせぬことが起きた場合、これはマニュアルだけでは対応できません。とことんシミュレーションをしないと達成できない接客の姿がありますし、こういうイレギュラーな場合に、お迎えする側の人間性が出るものなのだろう、と感じます。そう考えると、ますます奥深さを実感します。