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執筆中、何度も書いては消し、そしてまた書いては消す、という作業を繰り返した箇所がありました。日本マクドナルドの創業者である藤田田さんの話です。結局、本の流れから浮いてしまうと思ったため、書籍の中には登場していないため、ここで書いておきたいと思います。
第2章のTHE WAYの中で、ホテル再生に関わることになった経緯を書きました。活字にすると、”清算した”とそれはさらりとしたものですが、もちろん現場はさらりとしたものではありません。長年、気持ちに蓋をしていたことですが、書く作業中に色々な事がよみがえりました。
私が関わっていた会社は、アットジャパンメディアという投資持株会社で、田さんにはこの会社のアドバイザーをお願いしていました。会社を清算することになり、ご報告に伺うことになりました。子会社であるMTVに行ったきりになっていた元(?)社長も急遽同行することになり、2人でお邪魔しました。最後はきちんと挨拶するんだ、とちょっと嬉しい気持ちになったのも束の間、”田さん、この会社は無くなるんですけどね、MTVはバリバリやるんで、広告出稿お願いしますよ”と突然言い出したのです。それまで、穏やかに聞いてらした田さんでしたが、立ち上がると同時に、”出ていきなさい”と声の調子が変わりました。
私は、あまりの情けなさに、どうしていいかわからず、ぼんやり座ったままでした。その時に田さんがした話は、今でも忘れることができません。尋ねられるままに、残った社員の数と状況を説明すると、しばらく藤田商店で預かると申し出てくださいました。その後話を続けて 1)どれだけ外回りをしても毎日会社に顔を出すこと 2)社員の前では泣かないこと 3) ちょっとしたものでも必ず口にすること 4)眠れなくてもまずは横になること でした。 その翌日から毎日必ず事務所にお電話をくださるようになりました。フロアに響く、”貴子さん、田さんからお電話です!”の声は、残った社員全員に勇気をくれました。
ソフトバンクの孫正義氏が、起業を決意した高校生の頃、すでに著名な経営者であった田さんの元に相談に訪れたというのは有名な話ですが、この時期も、多くの経営者が訪れていました。何度か同席させていただきましたが、田さんがした話は、出資に応じるかどうかと、寝てるか・食べてるか、と体調を気遣うというというシンプルなものでした。
本当の修羅場において、大切なことは、寝て・食べて・冷静であることでした。どんな経営手法よりも、心身を整えることが大切な瞬間があることを教わりました。