GINZA SIXの内覧に行ってきました。(GSIXと言うそうです)銀座4丁目のあたりから、人の波が凄くて、入場するのも一苦労。”オープニングレセプション”と声をかけられたとおぼしき方は、フルレングスのドレスだったり、着物の方もちらほら。この華やかないでたちで、延々と並ばされるのはちょっと気の毒な感じがしました。”とにかく広くて混んでいる”と既にメディア内覧で中を見た友人たちから聞いていたので、今回は、半袖で歩きやすい靴という軽めの服装で出かけました。
ようやく中に入り、エスカレターを上がっていくと、お馴染みの草間弥生アート。
このアートは、期間限定だそうですが、効果絶大!報道も、SNSもあらゆる露出でこのアートが登場しています。建物は極めてオーソドックスな上質感のある空間ですが、このインパクトあるアートだけで、このビルのオープンは、あっという間に拡散していると感じます。
中に入っての印象は、日本橋三越を思わせる懐かしい感じです。この吹き抜け空間は、日本の百貨店の伝統的なレイアウト。大型だからできる贅沢感だと思うのですが、それをモダンに表現したような印象を受けます。商業エリアは、地下2階にフード物販、地下1階にビューティー、そして1階~5階が物販、6階が蔦屋書店+カジュアル飲食、13階がグランド系飲食という構成です。物販は、すべてブランドごとのスペース構成になっています。新しいプロジェクトなのに、極めて普通。ですが、これが結構見やすく回りやすい。
このところ、伊勢丹などで、ブランドの壁を取り払った販売スタイルが出てきているのですが、それに逆行する感じです。もちろん、このプロジェクトはテナント形式なので、そうせざるを得なかった事情もあると思うのですが。改装後の伊勢丹は買い物しにくく、何年経っても不自由を感じるので、すっかり足が遠のいてしまっていましたが、最近その理由がわかってきました。ブランドの壁を取り払って、一見顧客ベースにしたように見えても、その買い物をサポートするスタッフが居ないのです。その結果、単なる商品を見つけにくい売り場になってしまいました。
これが、海外の高級百貨店ですと、ハロッズでもニーマンマーカスでも、販売スタッフはそのカテゴリーの商品を熟知しています。例えば、ハロッズのカバン売り場ですと、サイズ別材質別にスーツケースがずらりと並んでおり、使用目的と予算を告げると、該当する商品に案内してくれ、絞り込んだ後は、数点を並べて、持たせてくれたり、私の身長で負担が無いか、取っ手は持ちやすいかなど、確認してくれます。割引はほとんどありませんが、十分納得して買い物していました。
これは衣料でも同様です。ニーマンマーカスに水着を買いに行くと、これまたあらゆるブランドから、サイズ、色柄とあっという間に揃えてくれ、補正、パレオ、バッグと次々に提案してくれます。これらもブランドミックスです。私が好む素材や色を理解して、候補の商品をずらりと並べてコーディネートしてくれました。結果予算を超えるお買い物になってしまったのですが、これも十分満足しました。
つまり、ブランドの壁を超えるということは、販売スタッフにそれだけのスキルが必要だ、ということなのです。残念ながら、日本の百貨店で、これができるところは皆無です。であれば、ある程度の品ぞろえをしているブランドで、そのブランドの商品を熟知しているスタッフから購入した方が安心できます。伊勢丹は、マーチャンダイジングで先走り、人の対応が追い付いていなかったのだと思います。そして、百貨店が模索する一方で、ネットでの情報を活用し、顧客が自分で編集する能力はどんどん高まっていっています。顧客はネット上で商品特性やスタイリングを熱心に研究するわけで、このスピードに百貨店スタッフが追い付くのは至難の業です。
さて、この話、流通だけの話ではありません。色んな売り場を見たり、サービスを体験したりしつつ、いつもホテルやスパのことを考えます。スパは、複数のブランドやトリートメントを提供しています。アロママッサージも、ヘッドスパも、そして和素材のフェイシャルもあれば、欧州系のハイエンドコスメのケアも提供します。かつてサロンはブランドベースしかありませんでした。クラランスやオルラーヌといったエステ系サロンに対し、ホテルが顧客の要望に応えるサービスとして始めた画期的なスタイルが、多様なメニューを顧客ニーズに合わせて提供することでした。それが今も続いています。
こういった顧客ベースのサービスの提供を目指す場合、スタッフの質の高さが根幹を成します。自分が知っていること、できることを顧客に薦めるのではなく、あくまでも顧客が何を必要としているか、その必要としているものに対し、自分のスキルが足りなければ、貪欲に身に付ける資質が無ければ、成立しません。
例えばスパには”タイムリチュアル”というトリートメントがあります。時間だけを設定して、あとはお任せ、と言うスタイルです。優れたセラピストが担当すると、リピートゲストは、2回目以降、”任せるわ”とおっしゃるようになります。自分が選んだメニュー以外に自分に必要なものがあるかどうか、という質問も多く寄せられます。当初このメニューを設定していない店舗でも、要望を受けたスタッフから、”メニューに加えてくれ”と提案があり、追加することがあります。
GINZA SIXは、テナント選定やフロア構成で、編集作業が行われています。ワクワク感あり、快適な動線になっており、素敵な施設だと思いました。目を引くアート、首相や都知事を招待してのオープニング、銀座をいっぱいにするほどの人を動員する広報、テナントを巻き込んだマーケティングなどなど、プロモーションも秀逸です。混み込みでしたけど、銀座の勢いを実感しました。
元気いっぱいになった昨日の内覧、その時間の中で、スパの”ホリスティック”の価値を再認識しました。さあ、また頑張ろう!!