アロマテラピーの世界的権威、シュナウベルト博士の講演に行ってきました。春には、ネリー博士が来日され、大御所の来日続きですが、皆様中国の大セミナーの帰りに寄られるようです。それだけ中国のアロマブームは凄いということでしょうか。
シュナウベルト博士の新刊。バーグ文子先生の翻訳です。
まずは、この本、とってもお薦めです。偏りなく、アロマテラピーの科学と現実が書かれています。巷にある、アロマテラピーのテキストより、とってもわかりやすい!
シュナウベルト博士は、科学者であり、ドイツから米国に移り住む際に(生活は、欧州と米国で半々だそうです)、アロマテラピーを最初に紹介した方でもあります。
アロマテラピーにも、”**流”とか”**博士の後継者”とか、へえ、すごいと思いつつ、それって何!?と思うことがあったり、資格が乱立していたり、主張していることが違っていたり、とスパの現場にいても困惑することが、多々あります。
スパの現場には、アロマテラピーの資格を取った専門性のあるスタッフが在籍しているので、私自身がそれほど学ぶ必要は無い、と長年思っていたのですが、日本の精油で商品を作る際、柚子の光感作を強く指摘するスタッフがいたことをきっかけに、ある程度学ぶ必要があると感じ始めました。
柑橘のオイルを肌に付けると、日焼けしてシミになる、これを光感作といいます。レモンも柚子も、ビターオレンジ系も同じ。ただし、これは圧搾法の場合。これが水蒸気蒸留法になると、光感作の元になる成分が検出されなくなります。この話を最初に聞いたとき、感心しきりで、工場まで見にいきました。大学の研究室が出してくれた分析資料(ガスクロマトグラフィー)のコピーもいただいてきました。この成分は、フロクマリンと言うそうです。
社内で色んなスタッフに聞いてみたところ、”柑橘”=刺激が強いから、ダメ!と主張するスタッフが思いの他多く、この科学資料をもってしても、理解を得るのに苦労しました。その理由は、最初に学んだところで、”絶対使っちゃダメ”と指導を受けたことが染みついていたことにあります。表面的には理解したと言ってくれていても、ゲストに商品を薦めてくれることは無く、リテール販売が得意なスタッフでしたが、柚子オイルも販売実績はゼロでした。彼女が取得していたのは、ごく初歩のアロマテラピーの資格でした。
スパの世界に触れれば触れるほど、セラピストは一定の科学的知識は不可欠だと思うようになりました。それは、植物学であり、生理学であり、心理学です。特に、どの化粧品にも植物由来成分が含まれていて、植物から採取したオイルをマッサージに使う以上、その性質や扱い方、注意すべきことを理解していることは、最低限のことです。アロマテラピーを専門としていなくても、ある程度理解していないと、専門家とは言えません。
スタッフに限らず、業界の専門家と呼ばれる方の間でも、主張は色々分かれます。そんな中、とてもフラットに、時に論文をベースにアドバイスくださる方が、バーグ先生でした。つい、答えは一つと思いがちなのですが、歴史の中で変わってきていること、常に新しい分析手法が開発され、発見によって使い方が変っているので、柔軟に考えた方が良い、と教えてくださいました。
シュナウベルト博士の講演は、柔軟性と学び続けることの大切さを再認識させてくださるものでした。
まず、アロマテラピーを学ぶものにとって、構成成分と効果効能を結びつけることは、習慣のようなもので、これが絶対と思いがちなのですが、博士の説明によると、それは”ガットフォッセが化学者だったから!”(チコちゃん風!)ええ~っと驚きの声。なぜ、フランスで盛んになったかという理由は、”そこにたくさんあったから!”ふむふむなるほど~。
何事にも絶対は無く、様々な環境で手法も、ブランドも変わり得るとのお話でした。
とはいえ、ずっと変わらないものがあります。それは、なぜ精油は人間に効果があるのか?という点です。答えは、”植物が二次代謝物を作る際、自分たちが生き延びるために、動物の神経伝達物質やホルモンに似せた物質を発達させたから”なのだそうです。実際に、化学式も類似しています。
やっぱり自然はすごいです。どれだけ人間が分析しても、きっと発見しきれない成分があるような気がします。
そして、もう一つ、アロマテラピーの周辺には、歴史があり、風習があり、欲があり、経済性があります。
自然の摂理でメカニズムができ、人間の歴史や文化の中で、引き継がれてきたもの、本当に奥が深く、そして神秘的です。こういう出会いがあるたび、幸せな仕事だなあ、と実感します。