気候行動サミットのグレタ・トゥンベリさんのスピーチが、あらゆるメディアで取り上げられるなど、環境問題への注目は高まる一方です。この流れ、アル・ゴアの登場以来な気がします。(そういえば、彼は今どうしているのでしょう?2007年にノーベル平和賞を受賞していますけど)
グレタさんが、ジェット機に乗らず、船と陸路でNY入りしたり、英国のヘンリー王子とメーガン妃のプライベートジェット利用が避難されたりと、日本で暮らしていると、海外での認識の差に驚かされます。その一つが、小泉進次郎氏が、牛肉を食べたことへの非難です。牛肉を食べることが、どれほど環境に悪影響を与えているか、すでにいくつものサイトでその理由がアップされています。
環境問題は、本当に幅広いため、単純に論じることがとても難しいのですが、私は2つの要素で考えてみたいと思っています。
一つは、テクノロジーです。私が小学生だったころ、公害は大きな社会問題でした。社会科の教科書には、都会の大気汚染や、河川の汚染の写真が多く掲載されていました。水俣病(熊本)やイタイイタイ病(富山)は、進行形の病として身近は存在でした。それらの公害は、経済成長を達成する上で、避けられなかった問題だったと論じられていました。多くの犠牲を経て、今、東京の空は澄みわたっており、河川には魚が戻ってきています。それは、必要な資金が解決のための技術開発に投じられ、長い時間をかけて施策が実行されたからです。これらの技術は、環境問題の解決になるとともに、新たな事業の創出となりました。
多くの場合、害が発生してから技術や資金が投入されるため、被害者が出てしまうわけで、人間の弱さと卑しさを実感してしまいます。人間社会が、少しでも賢くなっているなら、ネットなどの情報収集力が有益に機能するなら、予見と民意の総意が進むはずで、これが、21世紀のチャレンジなのだと思います。
人は進化に逆らえず、一度手にした快適さを手放すことはできません。グレタさん自身、今回は船でNY入りしましたが、もしも、ご自身の大切な人が事故にあったり、病気になったりした場合、最短の時間で会いに行ける手段を放棄しきれるものでしょうか?情報と選択肢があれば、人はそれを手にする権利があると思いますし、そうしなかったら、いずれ後悔するものだと思います。技術の進化を否定するのではなく、その技術をどうすれば、地球という環境との親和性を高められるか、という議論をして欲しいと思います。(少なくとも、今回勇気をもって声を上げた少女の生活を、窮屈なものにしないであげてほしいです)
ロケットを飛ばして、宇宙ゴミを量産するより前に、すべき技術開発はあるように感じます。
もう一つは、”移動”の問題です。オセアニアでは、白人の皮膚がんが深刻な問題になっています。オゾン層の破壊はもちろん一定の影響がありますが、そもそもこれは、”住んではいけないところに住んでしまった”ことに原因があります。この地域の乾燥と太陽光線は強烈です。それに耐えられる肌を持っているのが、原住民のアボリジニです。植物も、人間も、その土地に合うように進化してきたのに、それを人は科学の力で越えようとしています。
たまに珍しいものを見たい、食べたい程度ならまだしも、資金を先に手にした側は、世界中のものを何でも手に入れられると錯覚します。木材、コーヒーなどのし好品、オイルなど、大量に国境を超えることが、世界各地の環境を破壊してきました。そして、空輸します。移動がもたらす利点もあれば、移動する必要がないものを移動させることで、生じた問題も多くあります。
スパを通しても感じることがいくつかあります。精油のブームは1990年代から始まりました。欧州→日本→米国と広がり、今、中国も空前のアロマブームです。となると、別次元での消費が始まります。すでに、いくつかの精油は植物そのものが絶滅危惧種になってきています。たとえば、ローズウッド。家具では紫檀として有名です。(私の実家にも重いテーブルがありました)アロマセラピストのテキストには必須オイルとして掲載されていましたが、今、現物を手にすることはできません。近い将来、サンダルウッドも入手が難しくなると言われています。手に入らなければ、偽物が横行するわけで、偽和されたオイルが、低価格で流通しています。合成品しか使ったことが無い、というセラピストもいます。珍しいものを欲しい欲しい、しかも安い価格で、と乱獲してしまった結果です。
シルクロードの時代から、珍しいものに人が惹かれるのは、人間の習性なのだと思います。が、これだけ情報化が進んでいる中、いつまでも”珍しいもの””日本初登場”を有難がるのは、いかがなものかと思います。遠い彼方のものが、どんな環境でどんな人々の手によってもたらされるのか、全てを知ることは困難です。自分の周りで、環境に負荷をかけずに採取されたものかどうか、考えて欲しい。少なくとも、セラピストにはそういう意識で一滴のオイルを見て欲しいと願っています。
地産地消の意味も意義も深く、まずは自分の足元から始まるのが、環境問題だと思います。遠くの出来事ではなく、自分の周囲でも、出来ることは色々あります。