吉兆会長である徳岡孝二氏の著書「最後の料理人」を読みました。
まるで横でお話されているような、読みやすい自然体の文章が続き、何だかほっこりした気分で読み進み、読み終わた後は、心が満たされるような気分になります。
修行を経て、和食に向き合う姿、素材やその作り手との付き合い、文化の捉え方、お客様との付き合いなど、多岐にわたって記しておられます。一つ一つの文章に、ご経験の重みがあり、身に染みました。
特に考えさせられたのは、第一章 修行の時代 に書かれている”手取足取り教えてもらったは身につかない””日本料理がほろびかけている”のくだりです。
この本を読む前日に、とある研究会で日本のインバウンド観光のプレミアム化について話し合っていました。おもてなし、サービスレベルの高さ、和食の文化度の高さ、など、日本のツーリズムが持つ無形資産についての発言が続きました。
その無形資産は、これまでのしつけ、教育、プロについては修行の積み重ねが前提になっています。製造業が弱くなっている中、”これからは観光業”と政府も声を上げるようになりました。
それが、実は足元から崩れてようとしている、という現実を感じます。ルールはルールで、経営する側はそれを守らなければいけません。ただ、その中で働く人達は、これまで以上に自分で考えて、自分を高める努力をしていかないと、スキルを上げることができません。どの分野も人材の国際競争は高まる一方です。接客の場にも、マナーがしっかりした海外出身のスタッフが次々に入ってきています。日本人だという理由だけで、スキルが高いとは言えないのです。ある意味前より残酷な状況なのかもしれません。
そんな中で、私自身も、集ってくれた若い仲間たちに、何ができるのかな、と色々考えます。学びを与えてくれた本、今後も読み返したいです。
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