力作本「数寄」
長年の友人である川邊りえこさんが主宰する会の、25周年記念本として編集されました。昨年の今頃、「会員の活動をまとめたものを冊子にしたい」という話を聞き、写真撮影に出向きましたが、こんな立派な本になるとは!
タイトルの「数寄」をウィキで見ると、”芸道人熱心な人物の俗称”とか”本業とは別い茶の湯に熱心な人物、特に名物級の茶道具を所有する人物として用いられる”とありますが、ちょっとこの表現は軽いかな、という印象を受けます。
会を主宰している川邊さんとは、20代からの付き合いなのですが、その頃、私はBCGでコンサルティング修行のまっただなか、彼女はアート&企画の会社を立ち上げていて、1980年代にして、すでに若手美人社長として活躍していました。
今の会の立ち上げの時、企画案を一緒に見たり、場所の下見に付き合ったりしたのですが、正直、内容はあまり理解していませんでした(笑)。オープニングのお祝いには行ったものの、深夜まで続く仕事に忙殺され、ずっとご無沙汰。たまにサロンに遊びに行くと、美味しい抹茶とお菓子を出してくれて、それはそれは、当時の殺伐とした気持ちに染み入ったものです。
美人で優雅ですが、大変男らしい人なので、突き進み方と無茶ぶりが凄いです。そのお陰で、普通は出来ない経験を色々させてもらいました。先日の伊勢神宮での和歌奉納もそうですけど、銀閣寺、二条城と通常は外部に貸し出さない場所でのイベントだったり、ブータン行ったりケニアに行ったり。私は同行しませんでしたけど、パプアの旅はすごかったらしい・・。彼女といると、私はとっても保守的だと感じます。
イベントの相談を受けるとき、私はつい手堅い案を話してしまうのですが、”う~ん、でもあまり面白くなーい”のダメ出しのもと、ズンズン違う方向に進んでいきます。なんだー、じゃあ相談しなきゃいいじゃん、と思うのですが、きっとこういうプロセスを経て、彼女の考えも整理されていくんでしょう。(とポジティブにとらえます)
実は、2006年に、今の会社を起業したのは、彼女の一言がきっかけでした。ある会社に就職しようと思っていたのですが、”またあ?、そろそろ梶川貴子を表現しなさいよー”と言われて、ふむふむと妙に納得し、好きを仕事にすることを選んだわけです。
そういった経緯もあり、スパは少しずつ私が表現する場であり、私なりの「数寄」を形にする場所になっていきました。会社であり事業なので、もちろん収支は計算しますし、セラピストがハッピーかどうかは、何より大切です。
スパを作るとき、”どこどこのコピー”とか”日本初導入の外国製コスメ”とか言われることがあります。正直全く面白さを感じず、エネルギーが沸いてこないので、大体は最初にお断りします。
ここ数年、茶道のお稽古をしており、先生に誘われたお茶会はすべて参加してみました。大寄せの茶会は、本当に面白くない。面白くないなあ、という感覚が、”どこにでもあるチェーン店のスパ”と同じであることに気づきました。そこに企画や意思が無ければ、文化をまとっていても、退屈なものでしかありません。
私が少しずつ「数寄」を形にするように、スパセラピストたちにとっても、彼女たちなりの「数寄」を表現する場になるといいなあ、と思います。自分の思いを形にし、人に伝える場があるというのは、とてもとても人間的で価値があることだと感じるからです。
茶道で、和敬清寂とか一座建立という言葉があるのですが、人が集まるところ、大切なことは同じだな、と思います。「数寄」はその根っこのエネルギーのような気がします。