久しぶりに”エステとスパはどう違うんですか?”との質問が続きました。驚いたことに、エステ専門学校の生徒さん、美容ライターさんからの質問が続いたので、今日はちょっとまとめてみたいと思います。
エステティックと一言で表現しても、日本ではその業態が多様になってきています。本来は、適切な肌診断をもとに、手を使って施術をするのが、その意味するところだと思いますが、日本では、脱毛・痩身が主流になった時期が長く、しかもチケットを大量に販売する、という営業手法で大手が成長してきた、との独特な理由があって、もともとの本場であるフランスで行われていた業態とはかけ離れてしまいました。
スパは、ベルギーのスパ村が発祥、という説、ラテン語の”水による健康”がその定義であるとの説など色々ありますが、水の持つ清浄作用、体の負荷を軽減する作用などを取り入れ、美容と健康増進に役立てている業態、ということが言えると思います。
その業態には、運動・栄養・休養などを含み、その休養の一部にスパ・トリートメントが入ってきます。では、実際の手技はどう違うの?と訊かれると、ボディもフェシャルも、その基本的な手技は(手で行う限り)大きな違いはありません。もともと、リンパドレナージュと呼ばれる老廃物の排泄を主目的にしたマッサージの手法は、かなりリハビリを助けるマッサージに近く、フランスの名門エステティックサロンに行くと、時々カウンセリングの折に人体が描かれたポスターが出てくることもあって、日本のサロンより質実な印象を受けたこともあります。
と、本来の姿はかなり近いのですが、そのトレーニングの方法はかなり異なっています。海外のスパアカデミーでは、”ホリスティック”ということを全面に教えていきますので、栄養学。・スパキュイジーヌ、といった言葉や概念、タラソテラピーやアーユルヴェーダのような民間療法から出てきた地域性豊かなトリートメントについても全体像を学びます。リゾートスパやホテルスパで働くことを念頭に置いたカリキュラムが組まれ、その上でマッサージの手技を学んでいきます。
一方で、日本で資格が取れる(協会認定やCIDESCO)カリキュラムに関しては、こういったことをほとんど教えません。先日、ある専門学校に出向き、生徒さんと話をしましたが、スパ・キュイジーヌ、マクロビオティック、といった極めて一般的な女性誌にでも出ている用語を知らず、話しているこちらが大変困惑しました。試験項目の多くに”機械の種類と使い方”が含まれていることもあり、実際に手を使ったマッサージの技術はかなりお粗末なまま卒業します。おまけに、大手のエステティックサロンでは、入社面接時に実技の試験をしないとことも多く、”オールハンドのマッサージ”というスパで求められるスタンダードな技術を持って卒業してくる人はかなり少数です。
こういった事情もあり、ボディもフェイシャルも、手技別に資格制度がある米国、政府も後押ししている学校で、まさに”即戦力”になる手技を学んで卒業してくるアジア各国などと比べ、人気のスパが求める人材の育成と、制度がかけ離れているのが日本です。
それは多分、文化として異なる点もあると見え、一般的に言うと、エステ学校の生徒さんは化粧が上手、というかかなり濃いです。入社後のマナー研修時に、この化粧をいかにナチュラルにしていくか、茶髪をもうちょっと黒くしてもらうか、といったことにかなりな時間を費やします。
といったことを考えてみると、”自然・引き算”を基本にしているスパに比べ、どうも”飾る”ということを主眼においた価値観の形成がなされてきているのが現状なのではないかと思います。
ホテルの方やジャーナリストの方などで”いやあ、エステなんてもうダメでしょう”とおっしゃる方もおられ、そういう言い方をされると、反発してしまう一方で、採用の基準、その予備軍を育てる教育システムがどうも違う・・という部分を見るにつけ、本来根っこは同じであるはずのこの2つ”エステとスパ”の遠い距離にため息をついてしまう今日このごろです。