ウェルネス・アリーナでは、スパ産業に関わる方々のキャリア形成を考えているわけですが、セラピストのキャリアも、実は一般のお仕事に携わる方とそう変わりはありません。アカデミー、運営の採用面接、コンサルティングでの採用面接・トレーニングと昨年百人を超える方々との面接や実技試験を行ってきましたが、面接のときの第一印象はその後もあまり変わらない、というのが実感です。
どういうタイプの人が成功するか、との質問も多く受けました。私の答えは”迷わない人・ブレない人”です。どんな仕事についても、疑問に思うこともあれば、つらいことだって必ずあります。恋愛・結婚・出産・介護と、残念ながら女性ならではの岐路に立たされることも多くあります。問題は、迷いがあったとき、岐路に立ったときに、どう覚悟を決めるかです。石の上にも3年、とは良く言ったもので、仕事について3年以内に簡単に道を変えてしまう人に明るい展望があるとは思えません。
特に、新入社員で入った直後はどの会社でも多くのトレーニングを行います。一般企業は、その会社の社風やルールを教えることも多いと思いますが、スパの業界では、技術も含めて、即戦力となるノウハウを時間をかけて教えます。大変な投資です。しかしながら、トレーニングが終わったと思うと辞めてしまう、という例が後を立たず、その結果、就業経験が無いセラピスト見習いの就業機会はかなり限られてきています。
コンサルタントとして多くの会社を見てきた時代、実際に会社に入って実業に携わった時代を含めて考えると、この業界の離職率は異常なほど高いと思います。ノルマ制や保険未加入など、確かに、問題のある会社もあるにはありますが、どちらかというと、職に就く人の意識の低さが、結果的に業界における条件悪化を招いている面も否めません。お仕事の機会に恵まれた方は、”まず続ける”ということが第一歩です。
次に、キャリアアップを目指す場合、重要になるのは”好奇心”だと思います。セラピストからシニアセラピストになり、次にリーダーやトレーナーを目指していく場合、未知なものをどのように吸収していくか、積極的に取り組んでいくのかいかないのかで、開ける世界は大きく異なってきます。
”アップ”には多くの要素があります。知識・技術・人格、自分の充実と共に処遇の”アップ”もあります。ここを最初に強く主張される方も時々おられますが、上を目指すからには、それなりの努力は当然不可欠です。何より、部下を率いていくこと、部門間の調整をすることなど、プレッシャーもかかってきますので、強い心も必要です。上を目指すだけ目指して、ある日ひょろっと降りてしまうと、部下も含め、多く人に迷惑がかかることを良く自覚した上で、本当に自分は”アップ”してみたいのか、考えることをお奨めします。
結婚・出産・育児の際のキャリアをどうするか、という相談も良く受けます。一時的に中断する、スローダウンさせる、ということも十分ありだと思います。但し、その前に一定のスキルや勤務実績を残すことが条件になります。これはどんな会社でも同じで、制度はあれど、実際に適用できるかどうかは、その人の信用次第、ということです。
私の周りにも、育児をしつつ仕事を続けているキャリアママが数名いますが、その段取り力は素晴らしいものです。不慮の事態は必ず発生する、というリスクマネジメントをしつつ、仕事に穴をあけないように、最大源の努力をしており、その姿勢には感動すら覚えました。いつか仕事をする機会があれば、彼女と仕事をしてみたい、と強く思ったものです。
と思えば、お子さんがきっかけで、多くの変更を強いられた場合もありました。過去に実績があったと紹介された人でしたし、才能はある方だと思いましたが、組織的な仕事ができる状態ではない、とこちらは判断し、ご本人は思わず、ということで苦い思いをしたこともあります。
スパの仕事は100%ヒューマンビジネスですので、その人にしかできない、素晴らしい仕事です。この業界で、一人でも多くの方(主に女性になるのでしょうが)に一生の仕事にできるようなきっかけをつかんでほしい、後に続く人たちに憧れ・尊敬されるようなリーダーになってほしい、と心から願っています。今年、アリーナ(広場)がもっと広がるように、もっと多くの人が集い場所になるように、と思わずにはいられません。