今日、はじめてGOOD DESIGN EXPOに行ってきました。優れたデザインの商品に与えられるGマークと呼ばれる商品の展覧会です。日常生活でも良くみかけるものですが、これをテーマに展覧会が開かれていることを知ったのは初めてでした。アドバイザーとして一緒に仕事をさせていただいている、田子さんから紹介され、チケットもいただいたので、出かけてみました。
まずはその来場者の数と賑わいにびっくり!しかも、さすがハイレベルのデザインコンペ出品作品だけあって、その展示も、参加している商品のレベルもとても高いものでした。来場者の皆さんは一つ一つ熱心に見ておられて、昨今のデザインへの関心の高さを物語っているようです。
開場(朝10時)に入って、ずっと見ていたら、あっという間にお昼前。ちょっとお腹が空いたな~と思っていたら、開場の真ん中にPANCAKE DAYSが出店しているではないですか!スマイルマークでおなじみのパンケーキ専門店で(私は吉祥寺店に行ってます)、思わずウキウキ。早速座ってモグモグ。とくつろいでいると、徐々に人が増えてきました。参加企業のプレゼンテーションが始まるようです。TOYOTAとHONDAということで、聞いてみることに。
TOYOTAはPASSOを企画した女性が。そしてHONDAはデザインチームが登壇しました。TOYOTAは、男性優位であるトヨタ社内において、女性目線のプロジェクトがいかに画期的で、いかに工夫したか、というテーマで頭にお花をつけた女性スタッフがプレゼン。プレゼンビジュアルはいかにも電通が作ったんだろうなあ~という内容でした。一方で、HONDAは、人とデザイン、というテーマで、車・バイク・農機具など、異なるジャンルを担当しているデザイナーが登場し、自分の生活の中でのデザインへの興味や、なぜホンダに入社したのか、といったテーマで話が進みます。プレゼンスライドも、手作りで(パワポの美しいものでしたが)、デザインを生み出すのはあくまでも個人の哲学に基づいていて、それを醸成させる”場”が企業である、との印象を強く持ちました。ホンダに好感をより強く持ったのは言うまでもありません。
実は、昨日、ある会議で何が戦略優位性になるか、という議論になりました。技術(特に特許)で確立しないと優位性は保てない、という流れの議論でした。それは確かにそうなんだけど・・。でも、技術でも簡単に売り買いされる昨今、本当に重要なのは、企業風土なのではないか、と強く感じるようになっています。
いまどき”女性プロジェクト”が頑張った事例で出てしまうTOYOTAと、技術をエコや人間性(アシモとか)まで昇華させているHONDAでは、そもそも商品に対する考えがまるで異なるのだと強く感じました。そしてその哲学や社内のプロセスが、最終成果物として、エンドユーザーの前に現れるのが”デザイン”だと思うのです。
ちなみに、TOYOTAがプレゼンしたPASSOは、まるで日産マーチとダイハツのカフェプロジェクトを足して2で割ったような感じでした。プレゼンで使用していた音楽も、マーチのCMの音楽にトーンがそっくり。もう随分前になりますが、ゴーン改革の象徴として登場したマーチ。Friendlyのテーマが機能にもデザインにもバランスよく集約されていました。私はこの車が大好きで、宮崎で乗る車を探していたとき、迷わず日産のディーラーに出向きました。とても運転しやすく、ペーパードライバーから脱出できたのは、この車のお陰だったと思います。同じジャンルの車でも、ヴィッツ、ベルタとトヨタ車は運転しにくく、味気なくで、レンタカーで借りたとき、その違いにびっくりしました。燃費という点では優れていても(この部分は技術)、ソフト面でこんなに劣った印象を与えてしまうことを強く認識した覚えがあります。有名女優を起用して、大プロモーションを行ったベルタは1年もたたないうちに姿を消しています。さて、このPASSO,どの程度もつのでしょうか。
先日、ある製薬会社で、爽健美茶のことを講演する機会がありました。清涼飲料こそ技術的優位性などほとんど無い世界です。でも、お茶でもコーヒーでもブランドの優劣がはっきりつき、それにより企業の業績の明暗を決めます。味は最低限はおさえないといけないですが、イメージ醸成はそれ以上に大切です。とても面白いと感じたことは、製薬会社の会社の基本は”効果”にあります。まさに技術が優位性の根本です。それで勝負しきれない分野に、今ひとつしっくり来てこられないようでした。試作品を見せていただき、私がパッケージデザインに首をかしげていたところ、どうもそれもなかなか伝わらないようでした。
デザインは単なる表面の飾りにあらず、その完成形は商品だけでなく会社そのものを語ります。そして技術を上回る強い優位性を持っている!と確信できた一日でした。行って本当に良かった。