何かと不評続きの東京オリンピック2020ですが、表彰式の衣装が発表にも不評の嵐。
手ぬぐいを肩にかければ似合う、トイレサンダルみたい、礼節を欠いている、とコメントは辛辣です。
ちなみに、1964年の東京オリンピックのときはこんな感じ。
振袖の女性が、漆の盆にメダルを載せてサポートしています。
ジェンダーとか環境意識とか、情勢も変わっているから、という考えもあると思いますが、この2つの時代の写真を見比べると、さすがに考えてしまいます。
現代の日本では、差をつけることを極端に嫌う雰囲気がありますが、日本文化は、季節感と格の積み重ねでできています。その格は、差別しようとの意図ではなく、ひたすら相手への敬意を示すためです。1964年のこの表彰式の様式は、最高級の礼を尽くした装いであり、まさにどこに出しても恥ずかしくない技術と素材で出来ていることがわかります。誰が見ても美しいと感じるものです。
一方、今回の服装は、身軽で動きやすい=作業着=礼の意図を示せない、様式です。例えば、茶席であれば、こういった服装をしている場合、決して来客の前に姿を現すことは許されません。
今回のデザインをした方は、日本の伝統色を使用した、とコメントしていますので、日本を意識はしたのだと思います。が、学びが浅かったのではないかと感じました。大変残念なことです。
服装は、その国の文化度を表します。
数年前の根津美術館での茶会の記憶は強烈でした。庭で道案内のために立っていると、次々に外国人の方が寄ってきて、”そのキモノの写真を撮らせてほしい”と話しかけてこられました。日本の歴史が大好きで、着物にも興味があるけれど、1ヶ月滞在しても、自分がイメージしていたキモノを見ることが出来なかった。あなたのキモノが初めて見るホンモノなの!と興奮気味でした。先輩の訪問着が素敵だったので、お声をかけて一緒に写真に収まりました。益々日本が好きになった、と言われてとても嬉しい気持ちになりました。
せっかくのオリンピック、作業着を世界に発信してどうするんでしょう?