今回は、スパのチーム作りについて書いてみます。
ホテルスパの面白いところは、多様なバックグラウンドの人が集まるところです。アジア発のスパブランドには、自社でアカデミーを作り地元スタッフ採用で運営を開始し、その後も同様の仕組みを踏襲しているところもありますが、多いの場合は、いくつかのライセンスを指定し、一定の資格や経験を持っている人でチームを形成します。
どういった資格を指定するかで、そのスパのコンセプトがわかります。例えば、多様なゲストを対象にするクルーズ船のスパの場合、ボディワーク系、エステ系、アロマ系に加えて、日本の指圧もリストに加わっています。CIDESCO, CIBTAC, ITEC, IFA/IFPA、それに日本の国家資格である鍼灸です。
ホテル再生をきっかけに、スパの運営を開始したとき、お国により事情がかなり異なることに気づいたため、日本の事情を自分で調べてみることにしました。学校訪問、シラバスを調べる、実際に学校に入学して授業を受けてみる、資格を取る、海外の学校に短期入学する、と色々やってみました。
それぞれのセラピーには、発展するだけの背景があると思うので、基本的には、生理解剖学と皮膚科学をきちんと学ぶ仕組みがあれば、土台としては十分だと思いました。体について学んだあとは、使う粧材について学びます。エステ系は化粧品学がメインで、アロマテラピー系は、ここでキャリアオイルや精油について学びます。上級コースとして、エステ系は機器についてのコースがあり、アロマ系は、学校によっては占星術とかメンタル面のコースがある場合があるのですが、この段階になると???かな、という印象を受けました。特に、アロマテラピー系は、上級者ほど魔女みたいな服装になっていき、若干宗教がかっていて怖い・・・。
基本的な知識や技術を習得した方であれば、スパセラピストとしてスタートできるわけですが、ここで大切になってくるのは、チームワークです。エステ系の学校は、割と当初から”まずは組織で働く”教育をしますが、アロマ系の学校は、”まず自分らしくあること”を教育する傾向にあります。資格を習得しても、自分のケアや家族のケアに留める方も多いので(にしては受講料が高いけど)、当然といえば当然です。海外では、アロマ系の学校からホテルスパに就職する方が多く、ヒーリング系のタイプも多いので、あまりに”自分らしく”あるので、組織の一員としては難しい方も多いようで、しばしば海外のワークショップでは議題になっていました。
ホテルスパで働く場合、”ゲストのことや仲間のことを、高い優先順位で考えられる人”が求められます。活躍も出来ると思います。開業したり、講師を務めるよりも、若干自由度は下がるかもしれませんが、組織に守られる利点もありますし、より可能性を広げるチャンスも得られます。このあたりは、それぞれの方の考え方次第でしょう。
多様なバックグラウンドを持つ人が集まる場合、軸になるものが必要になります。私自身、スパにかかわるようになってから、これをずっと探してきました。軸探しをする中、考えるきっかけになったことが2つありました。
1つめは、ホテルで学んだこと。ウィンザーホテル洞爺のコンセプトが海外では通用せず(イギリスとフランスのパッチワークだと言われたこと)、次に関わったシーガイアのプロジェクトでは、国際的なホテリエから、sense of placeという概念を学んだことです。
この後に、今の会社を立ち上げることになりますが、それでもまだ軸ははっきり見えていませんでした。
2つめのきっかけは、東日本大震災でした。この後のプロジェクトのことは、拙著「SPA IN LIFE」にまとめてありますが、本当にこの国が潰れるかも、という危機感を感じる中、日本の風土や植物に向き合う決心をし、ALL THAT SPAのブランドを立ち上げました。その後、日本の様々な地域の作り手さんとのご縁が続いています。
結果的には、sense of placeの考え方を具現化することに繋がり、日本の観光も国際化に向かう中、大切なコンテンツだと評価していただけるようになってきました。SDGsなる考え方も、急速に広がっていますが、国産精油を使うこと、地方の産物を使うことは、大袈裟な社会意義を語らずとも、気持ちの繋がりや支え合う温かさをセラピスト自身が感じることに繋がっていると思っています。
これがうちのチームの軸と言えます。
海外の優れたブランドを導入する際にも、同じような価値観を共有できるかどうかを重視しています。そういう意味で、ファミリービジネスとしてじっくりやっているブランドとのお付き合いに、心地よさを感じます。
スパのチーム作りを考える中、私自身、多くの学びの機会を得てきました。出会いあり、発見あり、研究あり、迷いと相談を経て、より良いチームにしていければと思っています。