久しぶりに、日本橋の百貨店に出かけました。知人がアートイベントを開催していて、そのついでのお買い物です。日本文化を見直そう!と言う声が上がる一方で、着物や伝統工芸品を扱うお店は減る一方で、銀座三越も銀座松屋も着物売場を無くしてしまったので、ちょっとした小物も、日本橋高島屋か日本橋三越でしか購入できません。
小物買い物ついでに、呉服売り場にも立ち寄ってみました。色無地の着物を新調しようかな、と思っていたのでその下見です。せっかく作るなら、地紋も色もこだわりたいと思っていたので、専門家であろう百貨店で相談するのが良いと思ったのです。店頭には、手ごろな価格の色無地と帯のコーディネートがディスプレイされていて、価格も凡そ予算内でした。
スタッフの方に声をかけ、いくつか反物を出してもらいました。が、地紋も色もバリエーションが少なく、顔映りを見るために試せるのは1反しかありませんでした。しかも、価格を聞くと、ディスプレイしてあったものの約3倍。うーん、ここまで出すなら、妥協できないな、と思い、白生地から染めたいと要望すると、”なら千總さんへ”と京都の千總さんのインハウス店に連れていかれました。これもどうかと思いつつ、千總で気に入った白生地があったので、注文することにし、見積もりを作ってもらいました。が、妙に安い・・。先ほどの価格より安いなんてあり得ない、と思い、”千總さんですよね?この価格で合ってますか?”と確認したのですが、間違いないとのこと。う~んと思いつつ、そこまで言うなら、と思い、注文書に住所を記入しはじめました。記入が終わり、色見本を眺めていたところ、先ほどの方がバタバタと走ってこられます。何事かと思うと、”すみません、先ほどの価格は、長襦袢でした”と一言。まあ、そうでしょうね、とこちらはあまり驚きもせず、”着物用の”白布地を見せて欲しいと頼んだところ、”ここにはありません”の一言。
ああ、百貨店、ついにここまで来ちゃったか・・。多くを語らず、笑顔で店を後にしましたが、本当にガックリ疲れました。
着物売場にいる人なら、着物のことは知っていて欲しかった。品揃えは、会社の方針もあるでしょうし、仕方が無いとしても、襦袢地と着物地の見分けがつかないとか、価格常識が無いとか、これには本当に驚きました。
実は工芸品を購入した際も近い経験をしました。南部鉄器や錫のコップなど、海外の方にも人気の商品。産地によっても作り方や特性が違います。これも、売り場で”違い”を聞いてみると、価格の差と”これには桐の箱が付きますが、こちらは紙の箱の包装しかありません。どちらにしますか?”の答えしかありませんでした。
以前は、百貨店でこれらのものを購入するのは、本当に楽しく、豊富な知識を惜しみなく教えてくださったものです。その時は手が届かなくても、”いつか買いたい”と思いながら通っていました。そういう売場のプロはいなくなってしまったのでしょうか?
タオル1枚購入するのも、百貨店は楽しかった!そんなファンの私にとって、寂しさとともに、色々学ぶことの多い日でした。