富山の楽土庵に行ってきました。
尊敬する友人である林口さんプロデュース、五割一分の角谷さんチームの設計です。最初に相談を受けたのは、もう随分前のこと。林口さんの熱い熱い想いがありました。
富山には、散居村と呼ばれる地域があり、雄大な田畑の中に、防風林に囲まれた家々が点在しています。高台から見ると本当に美しい。それぞれの家は、アズマダチと呼ばれているのですが、それは、玄関が東(アズマ)を向いて立っている(タチ)ことに由来します。この地域は、風が強く、その向きには密に木々を植え、家を保護するのだそうです。
この地域の風土に合った建築様式ではあるのですが、維持管理が難しくなってきたため、解体される例が増えてきました。このままでは、この地域の原風景が変わってしまう、と危惧したことから始まったプロジェクトでした。
当初無謀と思われたこのプロジェクトですが、応援する人、企業が現れ、地域の皆さんの賛同も得て、ようやくこの秋オープンの運びとなったのです。費用面、事業収支と考えなくてはならない点は多々ありますが、サポートする企業の幹部の方からは、”妥協なく、林口さんが目指す形にして欲しい”とのお話があったそうです。本当に素晴らしい!
そして、完成した施設がこれ
母屋棟とレストラン棟で形成されています。
内部には、この地の”土徳”に関連した作品がズラリ。
紙、絹、土の部屋があり、私が宿泊したのは、土の部屋
お抹茶で迎えてくれます。このひとときも本当に上質。
ご近所のお寺で開かれていた、子供たちの太鼓の稽古を見学&参加。この体験もとっても得難いものでした。
ディナーはイタリアンですが、これもまた、土地の素材を活かしたお料理が並びます。ご近所さんが、色んなお野菜や果物を持ってきてくれ、それがすぐお料理になることもあるそうです。
普段はちょっと苦手なリゾットも、この日は完食!そしてこの器は、関係する企業さんオーナー一族の蔵から出てきたアンティークあだそうです。こういうとことろが、本当に豊か。
富山行きの前に取材を受けていた、婦人画報12月の「自然の力で再生する旅」の特集で、楽土庵と、ニセコのSHIGETSUをご紹介しました。
このところ、ラグジュアリー系のホテルも、地域創生型のホテルも、続々とオープンするのですが、作ることありきで、コンテンツはその後に無理やり探す、という例も少なくありません。スパも同様です。その結果、こだわりを求めて滞在したのに、どこかで見たようなコピーをまた体験する、という滞在になってしまいます。
楽土庵の場合は、長い時間をかけて理解し、学び、発掘したコンテンツを、絶妙なセンスで編集してこの形になっています。アートホテルと表現しておられましたが、その表現でも足りないぐらい。
私が心惹かれるのは、この土地にある「土徳」の思想です。背景には浄土真宗の教えがあるそうですが、感謝の気持ち、人を尊敬する気持ちに、自然に繋がる歴史を感じます。
太鼓の練習に参加していた子供たちは、素直に目上の人を尊敬し、その尊敬の先には、祖父世代の方々がおられるとの話が出ました。太鼓を打つ父親を”かっこいい”と思い、仲間と太鼓に取り組み、そのまま年を重ねて継承されるそうです。稽古には女の子も参加していて、とても活気がありました。
富山は私にとって、とても大切な場所なので、お連れする方も厳選します(笑)。皆さんが迎える準備をしてくださっているので、ドタキャンする人、当日気ままに予定を変える人は、頼まれてもお連れできません。客にもマナーが必要だと思うのです。今回の旅、私の富山愛を理解しつつ、様々な発見をともに楽しんでくれる連れに恵まれ、本当に充実した時間になりました。