アルチザン美術館で開催された展覧会に行ってきました。
”抽象画”をテーマに、セザンヌから現代作家まで素晴らしい作品揃い。最終日前日の駆け込みでしたが、友人の中には何度も足を運んだ方もいたようで、それだけ充実度の高い内容でした。
この展覧会が開催されたアルチザン美術館は、ブリジストン美術館が新しくなったものなので、収蔵品は石橋財団が管理していますが、取得した年代を見ると、今もずっと継続して購入を続けているようです。
東京には、公設・私設含め、素晴らしい美術館が数多くあります。両親に連れられて出かけていたのは、上野の森にある美術館がメインでしたが、自分で選んで出かけていたのは、原美術館でした。こちらは残念ながらすでに閉館してしまったのですが、コンセプトがはっきした展示に、素敵なお庭とカフェがあり、お料理も美術館の雰囲気にピッタリでした。80年代にすでにこういった施設があったのは、今考えても凄い事だったのだと思います。
私が好きな美術館は、根津美術館、出光美術館、山種美術館、サントリー美術館、アルチザン美術館、三井記念美術館、庭園美術館、東京国立近代美術館あたりです。展示をじっくり見る日もあれば、打ち合わせや買い物の合間に行ったり、お茶だけしたり、と気楽に出かけています。人混みが苦手なので、混みあう立地の美術館にはあまり出かけません。
西洋画、現代アート、日本画、工芸と、それぞれに個性もありますし、国際的に見て評価の高い西洋絵画もかなりのコレクションがあります。公的機関だけでなく、企業が収蔵し、それを公開してくれているのは、本当に素晴らしいと思います。特に、日本画や茶道具は、戦国武将が実際に使用していたもの、大河ドラマや歴史小説に実際に登場する銘が付いたものも、展示されていて、間近に見るとすごーく感動してしまいます。
海外旅行に出かけても、よく美術館に足を運びますが、美術館が充実しているということは、それだけ平和で文化の許容度が高い状態を示しているのだと感じるようになりました。ひとたび戦争が起きれば破壊されてしまいますし、文化大革命のような思想の転換や共産主義化が進むと、歴史的資産はすべて破壊されてしまいます。中国やモンゴルで美術館に行った際、そのことを実感しました。内戦があった国、植民地であった歴史が長い国の美術館も寂しいものです。
そういう意味で、欧州の美術館は見ごたえがありますが、イタリアの宗教画尽くしにはうんざりしますし、イギリスでは植民地からの強奪や文化の盗用を感じる面もあり、あまり楽しい気分で見る事の出来ない部屋もあります。フランスの印象派以降は楽しく見ることが出来る美術館が多くありますが、あくまでもフランスの美術に限られます。
海外の美術館を見た後で、東京の美術館を見ると、よくもまあこんなにあれこれと集めたものだと感心します。日本独自のものもあれば、中国古来のもの、韓国由来のものも。韓国系は強奪系も一部ありますが、美術館での展示は、大陸文化への敬意が溢れており、見ていてほっとしますし、本当に素晴らしいものを作っているな、と感動することがしばしばあります。
企画展では、海外の美術館からの借り受けも多くありますが、資金力はもちろんのこと、双方の信頼関係が無ければ借り受けは出来ないので、そういった積み重ねの結果を、私たちは享受しているのだな、としみじみ感じます。
京都に行く際にも、合間に美術館に足を運んでいます。東京と同じ展覧会が比較的空いているので、敢えて京都で見る予定を立てる場合もあります。そして、京都らしい伝統的な展覧会も楽しんでいます。が、やはり東京の層の厚さは別格です。それは、明治以降の財界人たちが、社業の傍ら趣味を持ち、高い知的好奇心に基づいた収集をした積み重ねあってのことなのだと思います。
キュレーションも日々進化し、解説も楽しい。そしてカフエも美味しい。私にとって美術館は、パラダイスなんです。