お茶のお稽古をしていると、日々学びがあります。
私が通っている教室は、社中の規模が大きく、施設も充実しているのでとても人気があります。先生も素晴らしく、先輩方も凄い。茶歴も社中歴も何十年という方がゴロゴロ(というかこれが普通)。朝礼から始まり、新しく入る人は先輩がしっかり教えてくださいます。なので、まったく経験が無いという方でも、というか、未経験の方の方がぐんぐん成長している印象を受けます。
先生は、お茶に対して本当に真摯です。勉強熱心ですし、本当によく動かれます。入門して間もなく目にしたのは、日中の稽古と夜の稽古の合間に、先生がさっと洋服に着替えて、お掃除を始められたこと。私は驚いてしまい、帰り支度をしている途中でしたが手を止めて、”私がいたします”とお伝えしたところ、お稽古でお疲れでしょうから今日はお帰りください、ベテランになったらどんどん手伝ってもらいますよ~と笑顔で答えてくださいました。
そういう先生なので、先輩弟子の方々も、本当に細やかに教えてくださいますし、もちろんいじめなんかもありません。なので、お稽古に集中でき、良き友人も出来ました。
人気の社中なので、見学や入門の方もひっきりなしです。なのですが、その様子を見ていると、考えてしまうこともあります。
見学の際、お稽古のスケジュールの中で時間を組みます。あまりに難しいお点前の最中ですと、中断することが先生にも生徒にも負担になるためです。見学の方に一服召し上がっていただけるように、薄茶点前の人を予定に入れ、見学の方用にお菓子も準備します。迎える側はこういった状況なのですが、気持ち良くお迎えできる事ばかりではありません。ドタキャン、遅刻、それに手ぶら、といった驚くような方もお見かけします。それに露出の多い服。今時、本でもネットでも、茶席に入る際の注意ぐらいは書かれているので、稽古しようと思う方であれば、準備できるはずです。が、お茶のお稽古の現場でもこういった状況。先生は何もおっしゃいませんけれど、明らかにガッカリした様子は見て取れ、とても気の毒な気持ちになります。
入門後もそれなりにあります。茶歴何十年というベテラン組が入門し、ほっと一安心していたのですが、事件が続きます。それは、水屋が荒れることです。使ったものはそのまま、洗っても拭かずに水浸し、抹茶は飛び散る、と悲惨な状態。結局、気が付いた人間が方続けることになります。
いずれは改善するかなと思って見ていましたが、またまた事件が起きるようになりました。それは、準備していたものが無くなる、ということです。お茶の点前は準備が大切です。必要な道具をすべて準備し、心を落ち着かせて稽古に臨むのですが、準備してちょこっと席を外すと、無い・・・。自分のお茶を入れた茶入れ、茶巾や茶筅を仕込んだ茶碗、水指、水次、、、。無くなると、また道具を持ってきて準備をする必要があるので、稽古の流れも乱れます。
いつもは気になってもあまり口にはしないのですが、当番の日は、掃除やお道具の準備片付けに一定の責任があるので、注意をさせてもらいました。お茶の世界では、茶歴にそれなりの重みがあるので、初めて数年の私が何十年もの経験がある(はず)の方にモノ申すのは、実は結構タブー視されていることです。(が、そんな場合じゃない)
言わずに済ます事は処世術の一つではありますが、日常のことは、ずっとストレスになり続けます。モヤモヤして陰口を言うぐらいなら、はっきり言って改善する方がずっとましです。ただ、感情的になっては意味がありません。お互いのことなので、不注意もあるとは思うものの、少しでも意識を持って欲しいという言い方をする一方で、明確に問題があった方には、相当はっきりお伝えしました。というのは、こういった行動をする方は、大抵嘘をつくからです。”私ではありません”と。これが一番不愉快なことです。
一つ言えることは、こういう方の点前は荒くて雑です。お茶は不思議なもので、手順は同じのはずなのに、やる人によって全くの別物に見えるのです。点前を見ているだけで、すっきりした気持ちになるようなご亭主もいれば、入ってきた瞬間からザワザワしてしまううようなご亭主もいます。
それだけ年数を重ねても、許状を持っていても、良い点前が出来なければ何の意味もありません。前述した先生の点前は、Youtubeを見ているだけで、心がすっきりします。これは本当に凄いことだと思います。
と、ここまではお茶の話。
稽古を通して感じることは、職場でも同じだろうな、ということです。スパは本当に似ている。
トリートメントの後片づけが雑な人が仲間にいるとストレスでしょうし、準備しているものを持っていかれたら気分は最悪です。
身だしなみが悪い、バタバタ歩く、水の音が大きい、物を壊す、ありがちなことですが、きちんとやっている方にとっては、辛い環境です。そして、これまたよくあることですが、破損や紛失があると、大抵の場合、当事者は嘘をつきます。きちんと謝罪すればよいものを、嘘をつくなんて信じられない、と思っていたのですが、最近理由がわかるようになってきました。こういう嘘は悪意ではなく習性なのだということを。この習性になってくると、多少のことでは変えられません。年齢を重ねていれば尚更。
気持ちの良い職場→気持ちの良い接客になることは明確なので、何が出来るのか、色々考えてみたいと思います。そして、私自身も、先生のようなすっきりした点前が出来るよう、精進したいという思いを一層強くしました。