「貧困大国アメリカ」という本(岩波新書 堤未果著)を読みました。サブプライムや金融破綻などで今や世界の問題児になってしまった感のある米国ですが、その問題の深刻さを具体的事例を基にルポルタージュしている、いい内容の本だと思います。
興味深かったのは、プロローグに続く第一章を”肥満”および食生活でスタートさせている点です。低所得者層の空腹を”効率良く”満たす食べ物がどういうものか、それがもたらす肥満、医療費の増大、それがわかっていても、その連鎖を断ち切れない米国の現状を伝えています。
この本に一貫して流れる論旨は、食・医療・軍隊と米国が抱える深刻な問題の陰に巨大な利益を上げる企業の存在がある、という現実です。今問題になっているサブプライムも、この問題により多くの人々が新たな貧困へと突き落とされる一方で、ここ数年間巨額の報酬を受け取って”勝ち逃げ”した経営者が存在する事実を忘れてはいけません。そして、一見合理的に見え、高い効率を誇っているように見えたビジネスモデルに大きな欠陥があったことを感じさせられました。
スパは、リラグゼーションと共に健康志向の流れに乗って成長した産業ですので、様々な機会に食、医療、薬と接点があります。その中で、ここ数年私自身はとみに”米国流”への疑問を強く感じるようになりました。
世界各地のスパトリートメントには、それぞれの地域の民間療法があり、野菜中心の食生活、海洋成分の活用、ハーブなど薬草の活用など、長い歴史に裏づけされた治療法が続けられています。海外でのスパワークショップに参加したり、スパでトリートメントを受けると、それぞれの特徴を感じることができます。
しかしながら、米国でのワークショップに参加すると、失望することが多く、ここ数年は参加を見合わせるようになりました。ISPA,スパファインダーなど様々な団体が主催していますが、投資がらみのプレゼンテーションが増えてしまい(これも米国らしいですが)益々その魅力を失ってきています。
失望の理由として、まず、"米国らしさ”を感じさせるものの紹介がほとんど無いこと、参加者が肥満で肌のつやが悪く(明らかに代謝が悪い)、もし日本であれば、ヘルス&ビューティーの専門家として仕事をすることは難しいだろうと思われる人が多いこと、あと、開催中に出される食事は明らかに”スパキュイジーヌ”でなく、多くが平気でビッグマックとコークをほおばっていた、ということ。スパキュイジーヌが出ているプレゼンテーションがありましたが、実際に食べているのはアジアからの出席者が多く、米国人はほとんど食べていませんでした。加えて、あちこちにサプリメントのコーナーがあって、一日回ると大きめのトートバック2つが一杯になるほど渡されてしまうほどでした。
需要があるものがある程度の利益を上げるのは当然ですが、スパビジネスのような業界においても、買収・淘汰、上場などが行われ、中身よりも投資の場に姿を変えてしまった米国スパ市場にがっかりしてしまいました。これも投資、リターンが優先し、一部経営者が巨額の利益を得て当たり前、という経済の流れが押し寄せてきていた、ということなのかもしれません。
日本においてもファストフードを始めとする米国流の食生活や、経営スタイルは大きな影響を与えてきたわけですが、ここで一旦立ち止まって、本当の中身、本当の効率とは何なのか、を考える時期に来ていることを感じました。