話題の本、「サピエンス全史」上下巻を読みました。イスラエルの歴史学者が書いたこの本は、人間を”サピエンス”と表現し、誕生から現在までを俯瞰かつ客観的に表しています。
生物、化学、政治、経済と、それぞれの分野での歴史について書かれた本は多くありますが、このすべてを横断し、それぞれの関連性にまで言及した書籍は他になく、”ああ、なるほど!”と納得すること数しれず、かつ、そう感じる度に、この著者の頭の中はどうなっているんだろう、と感服しながら読み進みました。難しいテーマの本ではありますが、論旨が明確かつ、日本語訳がわかりやすいので、上下巻、ワクワクしながら読み進むことができました。
ちょうど、自分自身でも昨年から本を書いており、改めて色々勉強する機会がありました。その過程の中で、疑問点があり、自分なりに答えを出した部分がありました。何度も何度も考えて、これで良かったのかどうか脱稿してからも悩み続けていましたが、この本の中でも同じような理解があったので、”そうそう!”と共感しつつ、嬉しくなってしまいました。
20章からなるこの本ですが、原始時代から始まり、19章では文明は人類を幸せにしたのか?というテーマについて書かれています。その中で、セロトニン、ドーパミン、オキシトシンといった文言が出現します。生物学者の研究結果として紹介されているのが、人間の精神的・感情的世界は、給与や社会的関係、政治的権利といった外部要因ではなく、生化学要因から来る複雑なシステムによって決定されること、体内に生じる心地よさのみが、ヒトを幸せにできる、と明確に書いてありました。
私自身、スパの可能性に気づいたのは、この要素が大きかったのです。
スパを通じてヒトに興味を持つ中、こんな本も読みました。
こんな本も。
さて、「サピエンス全史」を読んで、最も印象に残ったくだりは、”あとがき”です。完結にまとめられていますが、人間を”いつまでも満足しない、不満で無責任な神”と表現し、警鐘を鳴らしています。
本文の中で、スペインやイギリスが海外に乗り出し、次々に植民地化・奴隷化していくくだりがあるのですが、興味深いのは、もともと文化レベルが高い国であっても、外の国を侵したり征服することに興味が無かった国もあったと書かれていることです。植民地化→第一次世界大戦→第二次世界大戦と続く世界は、いくら食べても満足しない餓鬼のように、もっともっとと欲しがった貧しさの結果だったのだと感じます。
結局、そのベースにあるのは、周りが自分より下等であると考えてしまう愚かさであり、人類がこの後幸せを手にできるかどうかは、自分自身を見つけて充足感を学ぶことができるかどうかなのだ、と思いました。
そして、この本では、種としてのアプローチの中、家畜についても言及されています。牛も豚も鶏さえも、感情を持っていること。親から引き離されて食料として育てられることの残酷さ、一方的にヒトの食料にされた命が食料廃棄という形で、更に残酷な扱いを受けていることが書かれています。私はベジタリアンではないので、肉も魚もいただいていますが、改めてこの命をどういただくのか、深く考えさせられました。
スパでは、植物も含めて自然の恵みに感謝し、ヒトも自然の一部として考えます。健やかで心地よい状態にあることを、wellness, well-beingと表現し、自分自身のコンディションを整え充足感を保つことが、周囲の幸せにつながる、という考えです。このスパ的な考え方、生活を多くの伝える意味、やっぱりある!と確信できました。