我が家では、日経関連の新聞や雑誌しか購読していないので、自宅で受け取る情報は、かなり経済寄りだろうと思っています。それでも、このところ、”長寿社会””保険制度””健康増進”といった見出しの記事が目立つようになりました。朝日や読売など、より日常生活に密接した記事を載せている新聞には、もっと多くのスペースが割かれているのではないかと思います。
以前から問題提起はされていましたが、いよいよ健康問題が国家財政を揺るがすところに来てしまい、制度の見直しが待った無しの状況になってきました。
昨日の記事では、医療費40兆円のうち、命に係わる医療費が24兆円、自立医療が12兆円、それに保険制度から外す可能性のある医療費が4兆円と試算されていました。
この保険から外れる可能性の高い領域として指摘されているのが、マッサージや鍼灸です。柔道整復師に3800億円、マッサージ700億円、鍼灸400億円保険から支払われていると記載されていました。財務省からの発表を日経が記事にしているということを考慮すると、今後の見直しが行われることは確実なのでしょう。
マッサージに保険適用?とやや不思議な気持ちになりますが、私自身も経験があります。人に薦められて訪ねたマッサージ院で、保険証の提示や書類への記入を求められました。年末請求できると言われたこともあれば、最初から差し引いた金額の支払いで良かったことも。もちろん、多少の疲労はあったものの、整形外科などで、診断を受けた後の施術ではありません。テレビを賑わしている派手な不正請求だけでなく、こういった日常のやりとりで、保険請求が行われている事を初めて理解しました。リハビリの現場を見学した際にも疑問に思うことは多々ありました。
このところ、専門学校の関係者の方々にお目にかかる機会が増えているのですが、”マッサージ師、鍼灸師が食べていけなくなる””自由診療で成り立つ道を探してあげたい”との話をよく耳にしました。保険制度があるのに??と不思議に思っていたのですが、こういった流れがあってのことだったんですね。
今回、自立医療も効率化を求められていますが、その大きな問題の一つは、糖尿病患者の透析です。現在、公的負担で治療が行われていますが、保険の負担は膨大です。成人病、うつ病など、生活の在り方を見直すことで、防げる病に、すでに数兆円が使われ、今後放置すれば、数年のうちに数倍になるとの試算も出ています。日本の糖尿病市場、抗うつ剤市場は、国際的に見ても巨大市場なのです。
スパに関わるようになって気付いた日本と海外の違いは、この保険制度の持つ負の側面です。
海外では、日本のような国民皆保険制度はありません。ひとたび病気になれば高額の医療費が発生します。最たるものが米国で、数千万円の年収があっても、重症疾病になれば、医療費で破産すると言われています。マネジメントの契約の場合、年棒契約だけでなく、医療保険(民間)の保証内容を弁護士は必ずチェックします。健康維持プログラムの契約の中に、ホテルスパの利用料、デスティネーションスパに行く費用が含まれていることもあります。米国のスパが、肥満対策やストレスマネジメント、禁煙プログラムに力を入れているのはそのためです。
ヨーロッパでは、アロマテラピーやタラソテラピーに保険が適用されている例が多くありますが、これも、慢性疾患となり、医薬品や医療器具を使うよりも、軽度な状態で回復させたり、機能悪化を防いだ方が良いという医療経済学の考え方が適用されているからです。フランスでは、エッセンシャルオイルは資格取得者でないとブレンドできませんし、効果を求める分、高希釈で使用します。使用と結果についての論文も多数発表されています。
本当は、財務的観点からではなく、QOLの観点から、もっと早期の見直しが必要だった領域です。財務的余裕があれば、予防医療への重点配分ができました。この段階での見直しで、無駄の排除が意識の向上に繋がるのか、それとも新たなロビイング活動に繋がり、更なる混乱に繋がるのか、まだ見えません。