コロナの新規感染者数が減少し、少しずつ街に活気が戻ってきました。病床利用率もかなり落ち着いているとのこと、良かったよかった。
こうやって落ち着いてくると、テレビの報道も、助成金や協力金が支給されたされない、といった内容に変わってきています。オンライン申請を導入したものの、うまくいかずに、結局紙での申請に一本化(仕切り直し?)する自治体も出てきたとか。ついこの間、”何もせずに個人への給付金は振り込まれていた””PDFの紙2枚で、2ヶ月分の従業員給与が振り込まれていた”ハワイ(米国)の事例を聞いたばかりだったので、はああ、情けない・・とつぶやいてしまいます。
マスク、融資、補助金、助成金、給付金、今回はそのどれもがうまく機能していません。国にやること、関係無いと思いがちですが、これ、すべて税金です。”うまくいかない””人手がかかる”は、そのままコストに跳ね返ります。今回のドタバタを見ていて、以前手掛けたプロモーションのことを思い出しました。
コンサルティング会社の後、日本コカ・コーラに4年間勤務しました。私にとって最大の良き思い出は、爽健美茶が予想以上の大ヒットとなり、グリーンフラスコでのハーブ受講に繋がった、ということなのですが、実は、それ以外にも、色々お仕事してます。かなりのタフワークだったのが、缶コーヒーのジョージアを担当したことでした。
当時、缶コーヒーの市場で、ジョージアは圧倒的なシェアを持っており、会社(ザ・コカ・コーラ・カンパニー)にとっても、利益の稼ぎ頭でした。商品開発とともに、プロモーションが成功するかどうかは、一大事。色々と社内で大人の事情があり、缶コーヒーをほぼ飲まない(飲めない)私が、突然担当になり、コートが当たる!というプロモーションの第2弾である”がんばってコート”をやることになりました。
このプロモーションのメカ(仕組み)は、商品についているステッカーを数枚集めて(5~6枚だったと思います)応募はがきに貼り、郵送もしくは店頭の応募箱に入れるというもの。たったそれだけなのですが、問題は数。このプロモーション、4400万通応募がありました。いまだにギネス記録を維持してます。当たるコートは3万着。すさまじい数なのですが、準備期間3ヶ月。はっきり言って死にました。
コートを準備して、待っていれば良いというものではありません。まず、該当期間には、もれなくステッカーを貼った商品を出荷う必要があります。応募はがき、応募箱、セールスマン用のジャバ―、告知物(50種類ぐらいありました)、営業所でのキックオフ大会、全国大会、流通向けの説明会、応募はがきの保管場所、抽選会、などなど。そしてもちろんテレビ広告の制作。
コート3万着の費用が約3億円、ステッカー代が3億円、店頭告知費用や抽選などで3億円、それにテレビのCMが数十億円。これがプロモーションのコスト構成です。つまり、テレビ告知を除いて考えても、総費用の1/3しか景品代には使えない、ということなのです。結果的に4400万通応募があったプロモーションでしたが、前年も3400万通応募があったため、ボトラー社からは、”もっと景品数を増やしてもらえないと、店頭でクレームになり逆効果”との指摘が多く寄せられました。
ちょうどこの頃、米国でのスーパーボールのハーフタイム時のプロモーション(電話を使う)や、ネットを使ったプロモーションの手法が紹介されつつあり、あ”~~~、デジタルツールを使えれば、もっと景品そのものにお金をかけられるのになあ、と日々真夜中に考えておりました。ステッカーのコストを1銭下げるのに、どれだけ深夜残業したことか・・。
つまり、アナログでやると、それだけハンドリングコストがかかる、ということなんです。表に出ている数字は、”これだけ支給ます”なのですが、想定したオペレーション以外になると、それだけ人件費がかかってきます。特に、経済産業省の持続化給付金は、ネットのみの申請だったのが、相談窓口だの、紙での申請OKだの、ここにきてまた方針を変更しており、どれだけのコストアップになるのか、恐ろしい気がします。(すべて税金ですから)
今なら、広告代理店には、ネットプロモーションと紙を使ったプロモーションのコスト比較があると思うのですが、多分、コストだけで数百倍、所要時間については、数万倍ではないかと。
役所が紙好きだからデジタル化しないんだろうなあ、と思っていたのですが、そもそもネット申請できない事業者がいたことに驚愕している今日この頃。一律給付10万円は仕方無いにせよ、持続化給付金は、ネット申請以外は不可!と拒否すべきだったと強く思ってます。
米国はすぐに振り込まれていいなあ、と思うだけでなく、インフラ作りに協力もしないと。隠れたハンドリングコストも、すべて税金です。
あともう一つ。4400万通の超アナログなプロモーションをやった身としては、たかだか数十万、数百万で、パンクする状況がどうしても理解できない。しかも潤沢に予算あるのに。ここは、ハンドリングコストだけじゃなく、ハンドリングスキルの問題なんだろうか?と首をかしげてます。