丸の内の三菱一号館で開催されているシャネル展に行ってきました。
東京で開催されるブランドの展覧会は、ルイ・ヴィトン(これは素晴らしかったです!)やエルメスを良くみかけますが、どれもブランド側の主催です。今回のシャネル展は、美術館側の開催で、展示自体もあまりブランド色が強くない印象を受けました。
周辺の告知も美しい。
会場の壁面はこんな感じ
シャネル自身の人生がドラマティックであるため、映画を観たり書籍を読んだりして、ある程度は理解しているつもりでしたが、改めてその作品を見てみると、本当に”革新者”だったんだな、と実感しました。
彼女が活躍した時代は、まだコルセットが残っていて、貴族階級には専門の仕立て屋さんがついていました。その前の時代のフランス革命で、フランス料理と美容術が宮廷の外に出て、それが今のフランス料理とエステティックのスタートになっています。(と、美容の歴史で習います)
貴族階級の服装が徐々に変わってきてはいても、コルセットを着用する歴史は20世紀になっても残っていたって凄いことです。で、そんな中、生み出したのが、シルクジャージーで出来たワンピース。フィッツジェラルドの映画によく出てくるタイプのデザインです。今見ても素敵なデザインなのですが、この当時、シルクジャージーは、ナイトウェア(つまり寝間着)専用の素材だったそうです。これは衝撃!
男性用の服素材だったツイードを、女性用のスーツに使用したのもシャネルが初めて、宝石だけが価値があると言われた時代に、宝石を使わずにインパクトのあるアクセサリーを生み出したのも、シャネルが最初。チェーンとレザーを編み込んだショルダーバッグの肩紐は、ずり落ちるのを防ぐため、と次々にイノベーションを興しました。
そんなシャネルに憧れて、服、バッグ、アクセサリーを購入し続けた時期があります。某ブランドのマーケティング研修でパリの本店を訪れ、一度は実際に着てみたいと思ったことや、ホテルの仕事を始めた時期に、シャネルの銀座ビルが出来、接点が増えたこともきっかけになりました。
ジャケットは本当に美しく、素材はシルクやシルクウールが多用されています。シャネルのスーツは、裏地にシルクを使用しており、ジャケットの裾には直線のラインを保つ目的でチェーンが縫い込まれています。見ても触っても本当に美しい。キルティングのバッグも本当に綺麗。
ただ、シルクの裏地は滑りが悪く、チェーンが縫い込まれたジャケットは重い。キルティングバッグは、大きさの割に中に物が入らず重い。アクセサリーも存在感ありすぎ。と、働く私の日常に、シャネル製品はなかなか合致せず、そして、肩こりの私に重さが響き、結局次々に手放してしまいました。まあ、それだけ私に優雅さが足りなかったということなのですが。
ただ、今回展覧会を見て異なる考えを持ちました。この時代にシャネルが生きていたら、何を作っただろうか?ということです。
今見ても古臭さのないデザインを1920年代に作っていたのは、本当に天才的!これに素材革新があれば、もっと軽くてもっと動きやすいシャネルスーツもドレスもあったんじゃないか。あの時代にシルクジャージーを使った、ということは、今ならいくらでも素材の選択肢があり、しかもシャネルの名前があれば作れたでしょうし。
実際に商品を購入しなければわからない点として、メンテナンス体制があります。ハイブランドの場合、サイズ直し、皮革製品のメンテナンスに相当の人員を配置します。このコストも含めてブランドだと思うんです。
かなりのお値段のシャネルバッグを購入した後、メンテナンスについて尋ねたところ、”当社ではやっておりません”の一言。チェーンや羽などの異素材を良く使用するシャネルの場合、メンテしなければそのまま古ぼけて使えなくなります。エルメスやヴィトンなど、展覧会を開催するブランドの強さはこういったところにもあるのかもしれません。
働く女性も、女性らしさもどんどん変わりゆく今、”新しい女性像”を掲げて誕生したブランドは、コアバリューを失いつつあるのかもしれません。