新しいプロジェクトの続きです。
東急歌舞伎町タワーには、東急ホテルズの自社ブランドである2つのホテルが出来ます。20階から38階のフロアにGroove, 39階から44階にBellustar, そして、その上の階である45階から47階のBellustar Penthouseに5つのペントハウスルーム、レストラン、それにスパが誕生します。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002658.000005113.html
ビル1棟を丸ごと社内の開発チームで立案していくプロセスは、とてもダイナミックなものでした。そして、ビル自体のコンセプトが明確であることは、スパの立案をする上でも大きな助けになりました。
Grooveが、”街のエネルギーと一体になる”コンセプトであるのに対し、Bellustarは”日本の技・粋に浸る” そしてペントハウスは、その延長線上にあり、更に特別感・上質感があるものがコンセプトです。
エネルギー満ち溢れるGrooveに対し、Bellustarは、落ち着きや静けさがある空間で、それぞれにはっきりした個性があります。
このビル全体のコンセプトを伺う中、スパのイメージは、空、浮遊、俯瞰、リセットを軸にすることにしました。そこから、本を片手に籠る日々が始まります。
日本文化は、アジア発祥の考えに多くの影響を受けています。漢字はもともと中国からもたらされたものですが、一つの漢字でいくつかの意味を持つものがあり、これだけでも興味深いものです。
例えば「空」英語で言うskyを表すこともあれば、「空っぽ」「空しい」を表すこともあります。もともと、「空」は仏教用語です。般若心敬に出てくる「色即是空」がその例の一つです。サンスクリット語では、”シューニャ””スンニャータ”と発音するようです。発音しやすい名前を色々考え、スパの名称をSPA Sunya 読みは”スーニャ”にすることにしました。
どれだけ雑念があっても、このスパに来て自分を空っぽにし、リセットする時間を持って欲しいという想いを込めました。
工事中のスパエリアに入ってみると、そこからは開放感ある東京の空が広がります。お天気が良ければ富士山も。
そういう時間を体感すると、”自分を空っぽにする”時、空(sky)が持つこの広がりや浮遊感は、理屈無しにエネルギーをもたらしてくれるものだと染み入りました。
空っぽになりたいとき、他人の気配は避けたいものの一つです。初期に作られたスパのデザインは、大きなプールがあり、温浴があり、ロッカーがあり、そして個室がある設計になっています。充実したアクアの施設は魅力的ですが、残念ながら、ここで不快な思いをする事も珍しくありません。
誰にも会いたくない、静かに過ごしたいというニーズの高まりの中、スパスイート式の施設が増えてきました。スパスイートの定義は、”そのお部屋だけで完結すること”です。着替え、シャワー、トイレが完備され、お部屋によってはお風呂がある設計です。今回は、すべての部屋をスパスイートにし、そしてそのお部屋からも空が見えるようにしました。これは、スパゲストのリサーチの中で、”部屋のあたりはずれ”を嘆く声を多く耳にしてきたからです。東京のホテルスパの場合、価格もそれなりの設定です。ゲストにとって少なからぬ金額を支払っているにも拘わらず、窓のない小さな部屋に通されトリートメントを楽しめなかった、という声が多かったため、設計できる機会があれば、この点は何とか解消したいと思い続けてきたので、夢がかなった思いです。
そしてもう一つはスパラウンジ。これも以前からの設計では、横に慣れるスペースが確保されていました。外に海や湖があれば良いのですが、これもまた閉ざされた空間で、同室になった方がスマホをお使いになったり、前のゲストのお茶がそのままになっていると、これまた寛げません。でも、トリートメント後はゆっくりしたい。なので、これもまた空が見えるラウンジで、ゆっくりしていただけるようにしました。お茶はどれだけでも、そしてトリートメント後のヘアメイク直しができるブースも作りました。
お客様だけでなく、このスパで働くセラピストにとっても、快適な環境になるように、作業動線も考えて作りました。いくつもスパを作ってきた私の集大成!ざっくりしたレイアウトを、設計チームの方々が細やかに仕上げ、配管や規制面の課題を、何度も何度も線を引き直すことで形にしてくださいました。