スパのプログラムを作っていく上で、食事は大切な要素です。いくら高級な化粧品を使っても、レーザー治療をしても、適度な運動と健康的な食事をきちんと続けてきた肌にはかないません。
スパ・キュイジーヌと呼ばれるものは、世界中にあり、リゾートスパのレストランには大体用意されています。驚くほど、考え方はまちまちです。アジア、ヨーロッパ、アメリカと本当に色々でした。
かなり良くできている、と思ったのは、私のお気に入りのチバソム(タイ)です。カロリー調整、味のバリエーションとも秀逸ですが、味のベースがタイ料理なので、日本で定着するかどうか、と問われると、この点はかなり疑問です。(惜しい)このチームで和食をアレンジしてもらえるといいのに・・と思ってしまいました。
一方で、かなり疑問をもったのは、フランスのタラソテラピーの本場、サン・マロです。海辺の町で、市場には豊富な魚介類が並んでいます。材料は良いのでしょうが、全ての料理が大味でした。(これはシェフのセンスによるものか?)ダイエティークのコースは食材の種類が少なく、サラダはボールに2~3種類の葉物がドーンと入っており、2日に1回は塩でボイルした海老が山盛りになって出てきました。2回目からは、半分以上残してしまい、いつもお腹を空かしているというひどい経験をしました。そうかと思うと、白身のムニエルがバターたっぷりのソースと登場するなど、満足できた料理は一皿もなく、かなり著名な施設ではあったのですが、ガッカリして戻ってきました。ここのノウハウを導入した施設が、日本でもいくつかできていますが、やはり料理はひどかった、というのが周囲の評価です。
タラソテラピー系の施設は、ローカロリーにする、ぐらいしか方針を持っていないのか、かつてのタラサ志摩でも似たようなことがありました。和食も洋食も、両方ダイエティークのコースがあるのですが、フルコースから2~3品抜いて、野菜ジュースを足しただけ、というメニュー構成で、かつ料金は同じかやや高い、というものだったと思います。隣のテーブルに次々に並ぶおいしそうな料理を見つつ、何だかとっても不幸な気持ちになったのをよく覚えています。(食べ物の恨みはコワイ・・)
などなど、様々な経験をしつつ、最近では、マクロビオティックや、友人の加藤奈弥さん主宰の薬膳などを学びつつあります。あと、ホテルへのレストラン導入などここ数年の経験で学んだことは、素材の力を上回るノウハウは無い、ということでした。
ある雑誌のスパ取材で、数件のホテルを訪れたのですが、予想した以上にお料理に差があったのです。取材陣で絶賛したのは、シーガイアのアガペのお料理でした。何といっても、野菜が本当に甘いのです。この自然の甘さをうまく引き出す技との出会いで、体にも心にもやさしい料理に仕上がっていました。実は、数日後、違うホテルにスパ取材に行った折、出てきたお料理に驚いてしまったのです。野菜の味がしないのです。メニューそのものは良く考えられていましたし、写真に撮ったら、そう変わらない印象になるかもしれません。でも、野菜そのものに強さが無い分、調味料の味が勝ってしまっており、かつ、火を通した分、パサパサになってしまっていました。宮崎にも一緒に行ったライターさんと思わず無口になってしまい、"何だか寂しい気持ちになるね・・”とつぶやき合ったディナーになりました。
スパ・キィジーヌ、マクロビオティック、薬膳、そのどれもに共通している項目がいくつかあります。それは、”新鮮な素材を使うこと””季節感のある素材を使うこと””有機農法で作られた素材を使うこと”などです。肉や魚、貝類、果物に関する考え方には違いがあるものの、”素材の命を体に入れる”という考え方は不思議なほど一致しています。
それぞれのクラスに参加したり、ホテルのレストランを作ることに(はじっこで)参加させてもらったりして、少しずつ、私なりの”スパ・キュイジーヌ”が出来上がりつつあります。(でもまだまだ研究中!)