2007年3月期の決算で、シーガイアがやっと営業黒字を計上しました。前年のEBITDA黒字に続く快挙です。GOPが黒字になり、EBITDAが黒字になり、ようやく営業黒字という道のりを歩んできたわけです。メディアではよく”再生”という表現をしますが、これは正確に言うと、”再生”ではなく”始めての成功”であり、その意味合いはかなり異なります。
シーガイアは、3セクとして事業体をスタートさせてから、一度も黒字になることなく、数千億の累積赤字を抱えて破綻しました。その後、ファンドのリップルウッドがその経営を引き継いで、今日に至っています。オーシャンドームでにぎわっていた時期も、大幅な赤字を抱えており、外相サミット開催にあたっては、その経営維持のために、税金まで投入されるという暴挙もなされました。
経営再建のため、内部に在籍していた人間の一人としては、本当に感無量で、社員の皆さん、および現経営陣の皆さんに、心からのおめでとうを申し上げたいと思います。シーガイアに関しては、ファンドであるリップルウッドの担当者、ホテル側に身をおいたマーケティング担当者、そして地元出身者であることから、地元との折衝に当たった、といくつもの顔を持って仕事をしていた私ですが、この結果を受けての想いは、まず、地元出身者としての喜びがまっさきに浮かんできました。
シーガイアが黒字化したことは、宮崎という地方都市で、あの規模のリゾート事業が存在し得る、ということを証明したことになります。確かに、初期投資をリセットして、様々な減免を受けて、と多くの手助けを得ての黒字化ではありますが、それでも大きな一歩であると感じます。
シーガイアを訪れたことのある方は、その広さにまず驚かれるのではないかと思います。日向灘に面して、一直線に広がるビーチ、広大な松林の中に建つホテル、ゴルフ場、コテージと、その規模は世界でも有数のものです。本当に素晴らしいところなのですが、問題はその市場性でした。
シーガイアのマスタープランおよび課題の中には、魅力的で雄大なものもあれば(ともすると妄想の源になってしまう)、自力で解決できないもの(ともすると言い訳の温床になってしまう)ものもありました。議論と、迷走を重ねたのち、”いまそこにいる顧客”に的を絞るという当たり前の道を進み始めました。そんな地道なことでは・・、と懸念の声もありましたが、その地道を数字に変えてったのは、このプロジェクトに関わった(そしてその多くは既に宮崎を去っておられますが)外部の助っ人たちや、社員のたゆまぬ努力であったと思います。
”いまそこにいる顧客”にアピールしたかったのは、根本的な”宮崎らしさ”でした。もともと、宮崎は風光明媚で、とてものんびりしたところです。近代的な設備、東京もどきのサービス、人工的なプールはそもそもなじまないものだったと思います。ゴルフ場や温泉・スパのテコ入れは確かに大きな投資を伴っていますが、それにも増して力を入れたのは、地元食材の導入や文化を取り入れていくことでした。
LOHASという言葉の中には持続性(Sustainability)もその要素で入っていますが、リゾートも同様で、オーシャンドーム、カジノ、シアターなどの大規模な作り物は、ブームもあれば維持費もかかります。一時的には潤うかもしれませんが、そのブームが去ったあと、大きな負担が残ります。
シーガイアのリニューアル計画は、ある意味で、シーガイアとして、宮崎として、持続可能なものを最大限魅力的に見せていくことに的を絞ったものになりました。だからこそ、この”宮崎らしい”もので独り立ちできた、ということは大きな意味を持つと考えているのです。
オーシャンドームの閉鎖も決まりました。一時代を築き、大きな貢献をしてくれた巨大なプール、賛否両論ありましたが、子供たちの夏に忘れがたい記憶を作ってくれたのも事実です。取り壊しの前には、プールにもお疲れさまと言ってあげたい気持ちです。