スパの世界でも、最近は結果を求める傾向がより強くなっています。代替療法を支持する人、ほとんどがプラセボ効果だと言い切る人など、研究者の中でも考えは様々なようですし、メンタルでの効果だけでもいい、というアロマセラピー分野での意見もあったり、本当に幅がありますが、大きな流れは、科学的に解明しようという流れです。
私自身の考えは、社会で認められる場で提供されるものには、科学性が不可欠である、というものです。個人が運営するサロンであれば、好みも色々・顧客も色々だと思いますので、これに関してどうこう言う気はありませんが、ホテルやスポーツクラブ、公共施設など、施設そのものを一般の方が信頼して利用するような場には、一定のガイドラインが必要だと思っています。
科学が必要だと考えているもう一つの理由は、トレーニングにおいて不可欠だからです。スパを組織体で運営する場合、考え方の共有がチームワークの基本となります。考え方を共有するにはその理由が必要です。スタッフのトレーニングを行ったり、新しいプログラムを開発する中で、”何となく”では質を上げることに限界があります。中には大先生がいて宗教のようになってしまっているサロンもあるのですが、それもまた不健全なことです。社会常識を持ったスタッフがきちんと理解・納得をして、自分の言葉でゲストに伝えられるようにすることが、ゲストに上質なサービスを提供する上では不可欠なことです。
幸いなことに、これまで民間療法的にとらえられていた分野に、徐々に分析結果が出始めました。長いこと”身体が温まるから”と愛用されてきた生姜の成分が解明され、科学的に”体温を上げる”ことが立証されてきましたし、入浴が”気持ちいい”だけでなく、一定温度に一定時間入ることで、ヒートショックプロテインの効果があり、タンパク質が増えること、これにより体の組織の若さが保たれることなどがわかってきています。香りの研究も進んでおり、粘膜吸収の効果の論文も多数出てきました。アロマセラピーの科学も解明が進んでいくでしょう。
スパはもともと、民間療法を現代的に再編集したものです。ほとんとが長く”効果があったから”と言い伝えられてきたものです。社会疫学上は、これでも十分なエビデンスだと思うのですが、これまで科学的な立証がなく、”リラグゼーション”という枠でくくられてきました。その一つ一つに科学のメスが入ってきました。加えて言えば、”リラグゼーションの効果”も最近では研究が進んできています。極度のストレスは悪い食習慣と同等の影響を身体におよぼす、という論文の発表です。
セラピストが提供するもので最も大切なものは、ホスピタリティですが、その自信を支えるものは”正しいことをしている”という柱です。ドクターたちの教えを受けながら、スタッフとの勉強会を続けていきたいと思います。