会社の名前からもわかるように、私は”ウェルネス”という概念の実現を自分のライフワークにしています。自分探しという点で言えば、ボストンコンサルティングでのコンサルタント時代、日本コカ・コーラでマーケティングの実践を学んだ時代、リゾートホテルの再生に従事した時代、それぞれの仕事を本当に楽しんだと思いますし、学びも出会いもありましたが、それはすべて今につながっていたのだと、ようやく最近になって理解できるようになりました。
ウェルネスという概念は、なんとなくいい感じではあるものの、ぼんやりしているのも事実。それをプログラム化したり具体化しないと広がらないな、と感じたことが、今のホテルスパの事業につながっています。スパはもちろんトリートメントを提供する場ではありますが、同時に、空間そのもの、食事、運動とライフスタイル全体を表現できる独自のサービスです。コンサルティングだけでなく、実際の運営をスタートさせたことで、本当に多くの方々とつながることができました。セラピスト、ホテルの方々、コスメを作ってくれるメーカーさん、ユニフォームやタオルを作ってくれるメーカーさん。色んな分野の専門家が私のこだわりに付き合ってくれての今につながっています。
加えて、ひょんなご縁でアドバイザーやプロデュースをしたプロジェクト。鳴海製陶のOSOROや富山市のプロモーションも一つのウェルネスの表現ですし、本業だけでは学べなかったものを与えてくれています。
OSOROの取り組みは経営課題から始まったものですが、ここにも大きな方向性にはウェルネスの要素を入れてみました。それは、材料から調理すること、簡単に保存や温めが美しく楽しくできることで、コンビニフードの比重が高い人の食を何とか変えたいと思ったことが出発点でした。特に、この開発を思いついたとき、私自身が手軽に温野菜を食べたい、しかも手軽に美しく、と思っていたことはかなり重要なきっかけでした。様々な人の知恵が入ることで、かなり使い勝手の良いところまで仕上がったと思います。(まだ試していないアイディアもあるのですが)本発売が間もなくですが、こういった商品がどのように多忙な人の生活の役に立てるか、とても興味深く見ています。商品のデザイン、物性、価格などを決めていく中、それは色んな意見が出るものですが、マーケターとしては、孤独な戦いの後、自分の仮説がどこまで共感を得られるのか、自分自身を試しているのです。
加えて富山のプロジェクトは、ご縁をいただいて富山の魅力を発掘する機会を得たことがきっかけでした。日本には数多くの素晴らしい場所がありますが、富山の魅力は群を抜いています。その根源は立山連峰からもたらされる水にあります。この水によって、農産物はもちろん、力強い産業構造がもたらされています。日本で唯一、原発に頼らずに産業を支える安定した電力が得られる場所です。古くからある薬業もまた、現在の産業力につながっています。この自然の資源を活用した産業を粘り強く発展させてきたことで、本物感のある豊かな生活が実現できているのだと思います。
私がこれほど”ウェルネス”という概念にこだわっているのは、ダイナミックなマクロな流れとして、必然だと感じているからです。人口動態、自然環境、資源問題、生活習慣の変化、価値観の変化は、肉体にも精神にも様々な変化をもたらしました。この変化に何かの”解決”を提示することが、新しいビジネスを生むと考えているからです。