ブリヂストン美術館で開催されているドビュッシーの展覧会に行ってきました。といっても、もちろんドビュッシーは作曲家なので、彼の描いた絵が展示されているわけではありません。センスと企画力溢れる、巣素晴らしい展覧会でした。
ドビュッシーの曲は、絵画的です。以前、ショパン、リスト、ドユッシー、ラフマニノフと、複数の作曲家の曲を一人のピアニストが演奏してくださる機会がありました。経験豊かなピアニストの方でしたので、その曲背景を説明しつつ、ちょっとデフォルメ気味に演奏してくださいました。その折に聞いた曲は”月の光”(ベルガマスク組曲)でした。良く知られた曲なので、それまではあまり意識せずに聞いていたのですが、この時は、海に投影される月が見えるような気がして、”いい曲だなあ”と実感したのでした。
今回の展覧会は、今年の2月~6月まで、パリのオランジェリー美術館で展示された後、7月から、東京のブリヂストン美術館で展示されるという企画で、オリセー、オランジェリー、ブリヂストンの3つの美術館の共同作業で実現したそうです。私はオランジェリーが大好きなので、パリで見たかったなあという気持ちもありましたが、ブリヂストン美術館の展示演出は雰囲気が出ていて、秀逸だと思います。
作曲家の中には、あまり周囲と交流せず、”自分の世界”にひたすら没頭するタイプの人もいますが、ドビュッシーは社交的で、いい形で周囲の影響を受け(というか取り込んで)、軽やかに世界を広げていったタイプの方のようです。現代風に言えば”コラボ上手”ということですね。
その一方で、”自分好み”へのこだわりもはっきりしていたようで、美しくエレガントなものを好んだようです。興味深かったのは、カミーユクローデルと交流があり、彼女の作品をずっと手元に置いていたこととか、葛飾北斎の版画を自分の作品のモチーフにしていたこと、東洋と西洋を境界なくうまく共存させていた、といった点です。
エミール・ガレのガラスやジャン・カリエスの陶器も、これまで見たことの無いような意外性のある、かつ紛れもない一級品揃いで、確かに一作曲家のコレクションに留まらないレベルでした。(この展覧会の企画者のコメントにそう書いてあったのです)これら力のある作品にインスパイアされた、というのがよく理解できました。
と、こういった作曲家の横顔を知ると、改めて曲を聞きたくなるものです。家に戻ってから、早速iTuneで購入。展覧会の画集を眺めつつ、ピアノ曲を聴くという優雅な午後になりました。