昨日終日、G1ベンチャーに出席してきました。いつも多くの学びと刺激を受けるこの集まりですが、今回はいつもにも増して大充実と感動の一日でした。企画・ご準備くださった皆様、本当に有難うございました。
オープニングセッションで、代表理事である堀義人さんが、ご自身もベンチャーとして立ち上げられたグロービスの創業の頃を振り返り、そして、最初の投資がワークスアプリケーションで、その担当が仮屋園さんだったという話から始まりました。この話を聞きながら、私も色々思い出していました。以前、コンテンツ系のインキュベーション事業に関わる機会があったものの、投資を継続できず、その面倒を見てくれたのが、グロービスキャピタルであり、仮屋園さんでした。個性豊かすぎるマネジメントチームでしたが、彼らを支え、上場までもっていったとの連絡を受け、何て凄い人なんだろうと、大感動したのを覚えています。教育・投資・それに人材投入の3つをセットで持っていたのはグロービスだけでした。現在は、教育と投資に的を絞っておられますが、G1の場を通して人材やプロジェクトの流れを持続的に作っておられるのだと思います。いつも笑顔で抜群のリーダーシップを発揮される堀さんですが、道中を少し知っているだけに、その道のりは本当に大変なものだっただろうと思います。
「SPA IN LIFE」の中でも書きましたが、たまたま関わった投資事業に戸惑い、悩みながらも、世界の投資マネーの流れと国力の一端を知る機会になりました。海外の年金組合の投資委員会でプレゼンしたり、シリコンバレーに行ったり、アジア有数のファンド代表と話す日々は、ジェットコースターのようで、毎日ギリギリでした。が、英語で矢継ぎ早に質問を受け続ける中、”日本の将来の強み”を真剣に考えるようになりました。私なりに考えてフランスを放浪し、(INSEADで少しは勉強もしました)、そして可能性を感じて転じたのが、スパ的生活が包含する、ホテル・スパ・観光・農業の分野でした。日本の強みは歴史や文化に裏付けられた分野だと確信し、そして何よりその核になるのは人であると考えて、ホテル運営の現場に飛び込む決心をし、その一歩が、破綻したウィンザーホテル洞爺とフェニックスシーガイアリゾートの再生プロジェクトトでした。
その再生中のシーガイアを、若手ベンチャー経営者の団体さんが使ってくださるとの有難いお話をいただきました。それが、Infinity Ventures Summitでした。オーシャンドームをイベント会場に使ってくださるとのことで、ご挨拶に伺ったところ、参加者の名札をにこにこ笑顔で並べている人がいました。それが岡島悦子さんでした。自慢の宮崎を見てほしくて、愛車マーチを運転して、有機農法の綾町まで参加者の方を案内したりもしました。
世耕大臣とワークスアプリケーション牧野さんのお話の中で、日本のベンチャーが育っていない、との指摘がありました。それは例えば、資金調達であり、人材獲得であり、社会的なポジションの問題でもあります。米国で人気の就職先がダイナミックに変わっていっている一方で、日本ではいまだに、商社や銀行、大手製造業といった会社が上位に名を連ねています。”批判より提案”の趣旨に賛同し、前向きな発言が多いG1ですが、このセッションで牧野さんから、”ここに出席している会社で、商社並みに給料を出せている会社がどのくらいあるか。何とか出している利益は、大手との給料差が原資になっている面もあるのではないか。”との率直な発言がありました。これは多くの経営者の胸にずしんと響いたのではないかと思います。
給与レベルの話どころか、現実にはまだ一部に、労働搾取の現実もあります。それは介護産業の現場であったり、学生インターンの無給問題であったり、学生アルバイトの拘束であったり。若い会社だから、夢があるから、という言い訳で許されることではありません。本当に残念なことではありますが、こういった一部の未熟な経営者が、ベンチャー全体の信用を失墜させている現実もあります。
私が感じている課題は、もう一つあります。それは、これまでの日本のベンチャーの社会的な立ち位置です。上場したとか、大きな利益を上げたと報じられる会社は、ITといっても携帯やスマホのゲーム分野が多く、課金システムや違法行為などが目立ち、社会に貢献しているとか、尊敬される会社とは程遠い状況もあります。加えて、経営者の異性問題など、仕事以外のことが話題になる事例も多く、これでは、人も資金も遠ざかってしまいます。最近、キャスターを務める女優と結婚して話題になった経営者のプライベートがワイドショーを賑わしていました。プライベートなことだから、と同情する声もありますが、関連会社の株価が下落したということは、世間は”信用できない”と評価したということです。日本の学生は保守的だとか大企業志向だと非難する声もありますが、過去のベンチャーが、学生や親御さんにとって、チャレンジする価値のある場所であったかどうかは、難しいところだと思います。
最近、フェイスブックのCEOであるザッカーバーグがハーバードの卒業式で行ったスピーチが大きな話題になりました。同じハーバードでは、試験を通って入学予定だった生徒が、SNSなどで差別的な発言を繰り返していた、との理由で入学許可が取り消されたとの報道もありました。トランプ大統領の登場で、イメージ低下気味の米国ですが、リーダーを育成する志は健在だ、と何だか勇気づけられる出来事です。
セッション冒頭に、堀さんと世耕さんの口から発せられた言葉は、”世界の模範となる日本の産業”であり、Connected Industriesという概念でした。出席者から、”以前はネットの世界で完結できていたけど、今はそうはいかない””前のベンチャーと言うと、ネット、ゲームという感じだったけど、文化、食、アート、観光が議論される場になり、ようやくそういうステージに入ったと感じる”といった発言が相次ぎました。
日本でも、ようやくベンチャーが一定の役割を果たすようになった今、その事業の社会性、倫理観、それに社員や取引先として働く人々への責任が問われる時代でもあるのだと思います。もちろんそれは、ベンチャーだけの問題でもなく、日本において長い慣習として放置されてきたこと、時代に合わなくなってきたものもあります。新しい産業が起きる機会は、再構築の好機!と前のめりに取り組みたい、と思った一日でした。